◆ 斎藤×千鶴(転生パロ) +SSHL

□SSHL【4】
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【SSHL 17】



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……マフラー、早目に仕上げておいて良かったなぁ……。



クリスマス直前の週末、千鶴は母親と斎藤の仕事用の白シャツに
アイロンをかけながら思った。
先週の週末以降、店の営業時間が伸び、二人とも休みも無い。
家に戻るや否や、揃って撃沈している。
母親は体力的に、斎藤は精神的に疲れ切っているようだ。
気がつけば家事の殆どを千鶴がこなしており、学校と家事で
千鶴も少しお疲れモードではあるが、この家は食器洗い機や乾燥機が大型で高級品。
空調も母親の希望でガンガンに回しており、冬とはいえ冷え知らず。
母親と暮らしていた時より楽な面もあった。
二人の消耗に比べれば、疲れると言っても文化祭前の準備中のお祭り騒ぎ程度の疲れだった。

夕方近くなり、やっと起き出した母親がリビングに現れた。
「おはよー、ちーちゃん」
「おはようございます」
「……はじめはまだ寝てるのか」
「お部屋から出てきません」
「あの子苦手だからねぇ、客商売」
「そうなんですか?」
千鶴は母親にとっての朝食の準備をしながら話した。
「仕事は完璧だから使う側はとっても楽なんだけど。
本人はどっと疲れてるねー。話し相手をするのが疲れるみたい。
特にこの時期は絡まれるしね」
「……この時期のお客様はカップルが多いって聞いてましたけど……」
「そ。だから、女の子の目がはじめに行くから、男の方が、ねー。
目くじら立てちゃって、もう、器が小さい小さい。
どっしり構えてろって言うのよ」
「!」



う。確かに、バーテンさん姿はカッコ良かった……。



千鶴は母親の前にガッツリ系肉料理を並べながら、動揺を隠した。
「はじめもねぇ。適当に愛想笑いでも出来れば楽なんだろうけど。
我が子とは言えよく手伝ってくれてるから、そこまでは要求出来ないわ。
女の子、何とかはじめの目を自分に向かせようとするから余計ごたつくねー。
ま、うちの客層が客層だから女の子の自意識過剰は仕方ないんだけどねー」
千鶴は母親の、息子への評価に少し嬉しそうな笑みを浮かべた後、尋ねた。
「……どんなお客様が多いんですか?」
「セレブ」
「…………なるほどです」
「普段はね、オジサンセレブが圧倒的なのよー」
「じゃあ普段はお母様があしらうの大変なんですね」
「ちーちゃん、なかなか言うねぇ」
母親は笑った後、大きな口でパクパクと食事を始めた。
下品に見えないのは姿勢が良いからだろうか。
「でもね、藤田の関係者にコナかけようなんてサンピンは
滅多にお店に来ないから、割と大丈夫なの」



フジタの関係者……。
あまり突っ込まない方が良さそうかな。



千鶴が話を変えようかと思っていると。
「あ、ちーちゃん、25日に土方先生来るって。御挨拶するなら、
来た時に呼ぶよ?」
「……土方先生……。しますっ。ご挨拶しますっ」



そうだ。
井上さんにも忘れずに年賀状出さないと。
斎藤さんと出会えたのは井上さんが青森まで連れて行ってくれたお陰なんだから。
……年賀状、斎藤さんと並んだお写真を載せられたら
安心して貰えそうなんだけど……。
クリスマス終わったら斎藤さんにお願いしてみようかな。
投函、年末ぎりぎりになっちゃいそうだけど。



千鶴はいつの間にか“オネダリ”を考える事が出来るように、
少しずつではあるが、なりつつあった。
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