◆ 斎藤×千鶴(転生パロ) +SSHL

□SSHL【2】
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【SSHL 6】



千鶴の強い口調に、斎藤の焦りは一層強まった。



確かにクリスマスは独特の雰囲気はあるがっ。
千鶴はそんなにクリスマスを楽しみにしていたのかっ。



何か埋め合わせをしなければと思った。
「ならばっ、何か欲しい物を、」
焦って、言った。
「ありませんからっ、本当に!充分良くして頂いてますっ」
千鶴の返事が本心では無い事位は斎藤にも分かった。
「嘘だ」
「……っ」
千鶴は斎藤を見て、怯えた。
無表情の顔と真っ直ぐに射てくる瞳。
千鶴には、斎藤のその様子が指し示すものが何なのか分からない。
斎藤は怒っているのか。
真剣なだけなのか。
怒っているのだとしたらどの程度の怒りなのか。
物凄く怒っているのか、ムッとした程度なのか。



嫌。
怖い。
嫌われるの、怖い。



何をどうしたら斎藤の怒りが解けるのか分からない。
目を見開いて斎藤を見つめる千鶴の顔ははっきりと、怯えて強ばった。
千鶴が怯えているのは斎藤にも伝わった。
「すまないっ。言い方がきつかったかっ。その、俺はただ、
本心を言って欲しいと……っ、すまないっ」
「いえっ、……」



……本心……なんて。
何を、どう言うの?
大事にされている気はします。
気を使って頂いていると思います。
でも、私は斎藤さんが分かりません。
結婚って、妻って、私って、斎藤さんにとっては何なんですか。
このままずっと、私は子供みたいにお世話されてるだけですか?



「……本当に……無理はして欲しくないです……」
「……無理などとは、思わぬ」
「……はい」
「……俺に出来る事をさせて欲しい」
「……忙しくなると思いますから、体調に気をつけて欲しいです」
そう言って千鶴は笑った。
笑ってはいるが、千鶴の顔は晴れやかではない。
だが斎藤はこれ以上自分が何か言えば千鶴を追い詰める気がして、何も言えなくなった。



何が悪い?
どうして上手くいかぬ?
前はあんなに……。



斎藤は前世の記憶を引っ張り出してみた。
だが思い出されるのは千鶴からの嬉しそうで穏やかな笑顔ばかり。
いつも、笑顔から、見上げてくる瞳から、千鶴から寄せられる想いを感じられた。
しかし目の前の千鶴は確かに辛そうだった。
何とかしなければと思うが、どうしたら良いか分からなかった。

笑った後、千鶴は黙々と食事を再開した。
飲み込むのがひと仕事だったが、食べ終わらなければこの場から逃げられない。
無理に流し込んだ。
千鶴が食べ始めると、斎藤も黙って食事を再開した。
「……ごちうさまでした。今日も美味しかったです」
そう言って手を合わせた。
食べ終わっていた斎藤の皿を引き寄せて、キッチンへ運んだ。
テーブルから離れて、千鶴はやっと深く息をした。
千鶴が皿を洗い始めると。
斎藤はいつもの様に、ありがとう、と言って部屋に引き上げていった。
斎藤の姿が消えて、千鶴は今度はこっそりと、大きく溜息をついた。
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