◆ 斎藤×千鶴(転生パロ) +SSHL
□白河前夜
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暖かく濡れた肉があり、その先に蜜壺があった。
指で触れればその先の場所への道しるべのようにたっぷりと濡れている。
誘われるままに指を差し入れる。
千鶴の体に更に力が入った。
感じているのか。怖いのか。知りたい。しかし知ったところで何も変わらぬ。
斎藤は千鶴の唇から離れぬままズボンを脱ぎ捨てた。
ほんの少し、斎藤の体が離れ、唇だけで触れ合う時間があった。
斎藤の舌が入り込んできているという喜びに浸れた。
この後にされる事はよく知らない。 けれど知っていたところで斎藤の思うままにされるだけなのだ。
斎藤は再度千鶴の足を撫で、はざまの場所を確かめる。
唇が離れ、足を抱え上げられる。
思いもしなかったあられもない態勢にされ、千鶴は思わず着物の袖を噛んで耐えた。
あ、と思った。
指より優しく、それでいて重量感のあるものが押し当てられた。
考える暇を与えず、斎藤はそのまま千鶴の中へ刺し入れた。
一度引っかかるような感じと、無理に押し分けられる痛みがあった。
が、斎藤はその抵抗を感じなかったかのように、止まらず押しこんだ。
千鶴は、ぐっと、腹の中から圧迫されるものを感じる。
これが、まぐあうという事なのか、と思った。
私たちは今、男と女なのだ、私は斎藤さんのものになっているのだ、と思った。
…斎藤さん……
千鶴は少し目を開き、視界に斎藤の顔を探す。
斎藤は無表情な顔に、見た事の無い光を見せる双眸を乗せて千鶴を見下ろしている。
自分の中に入り込んだのが間違いなく斎藤だと目で確認できると、千鶴の体の奥がきゅっと引き上げられた感じがした。
「さいとう…さん…」
嬉しくて、名を呼ぶ。
でも何か、怖い。 こんな事をしている自分が怖い。
その時斎藤が、耐えるように眉根をぐっと寄せた。
「名前を」
斎藤に何か言われた。 その意味がゆっくりとしか理解できない。
姓ではなく名を呼べと言われたのだとゆるりと解った。
やっと言われた事がわかったのに、今度は言うべき言葉が浮かばない。
名前…さいとうさん。 さいとうはじめさん。
ああ、はじめさん、だ…。
「…はじめさん…」
斎藤は答えない。続きを待っているのか、答える気が無いのかもわからない。
ただ、今、斎藤に入り込まれ、そこから斎藤に全身を侵略されていく気がしていた。
「……体が…変わっていって…しまい…ます…」
水面に、墨汁を落としたように。
自分という色が斎藤の色に変えられていってしまう。
恐ろしく、甘美だった。
千鶴は斎藤からの返事があるとは思っていない。
ただ、斎藤を感じていると、この遠慮がちで自分に触れることに臆病な人に、今されている事が分かっていると、伝えたいだけで。
「痛いか?」
千鶴は必死に頭を横に振ってみせた。
「……すまぬ、自制出来ぬ」
しなくて、いい。
しないで。
「…はじめ…さんっ…」
斎藤を受け入れ、息を詰めている為呼吸が上がる。
胎内に押し込められた異物感に、爪の先まで塗り替えられ痺れていく。
「……は……っ…」
名を呼ぼうとしたのか、息をつこうとしたのか自分でも判らない声が、知らず漏れる。
体の奥に感じる重さが、皮膚へ溢れ出し、それがびりびりと脳天へ突き抜けていく初めての感覚。
どうしようもなく、千鶴は、再度袖を噛み背を反らせた。
「…んんん…っ」
籠った声が千鶴の口元から漏れる。
「動いても?」
何を問われたか、わからなかった。
けれど、千鶴は数度首を縦に振る。
すると斎藤は千鶴の腰を掴み、急激に抜きかけた。
いや。
やめないで。
「…や…っ!」
それは無くならず、激しく突き入れられた。
どん!と胎内に衝撃を感じたかと思うと、それの繰り返しが始まった。
…ああ、斎藤さんは、こうするのが気持ち良いんだ…。
思考が溶ける。
斎藤の動きを受け止めながら、また一つ斎藤を知ることが出来て嬉しいと思った。
この動きを何度繰り返されかわからない。
だんだん自分が人間でなく、ただの塊のような気がしてくる。
意識が解けそうで、千鶴は、はじめさん、 と、一つの名前を何度も唇で繰り返した。
千鶴の呟きが耳に届くたび、斎藤は高ぶっていった。
朦朧としたような千鶴が、自分の名を呼んでいる。
今の千鶴の頭には、自分の事以外欠片も無いのだと思うと、満足と情欲がせりあがってきて止まらない。
気持ちよくさせてやれているとは思わない。
しかし千鶴の口からはただ、自分の名前が滔々と流れ出ているのが嬉しい。
この女を狂わせたい。
この女に自分以外何もかもわからぬようにしたい。
千鶴の中は温かく、柔らかく、包まれる。その感覚が、斎藤を煽る。
俺だけのものにしている。
「く…」
斎藤は、体の奥から放出の気配が突き上げてきて、小さな呻きが漏れた。
今までで一番強く押し込まれ、千鶴は声を漏らした。
もう一杯まで押し込まれているのに、更に押し込もうとされ、千鶴は眉根を、ぎゅっと寄せた。
その時、斎藤がわずかに身を反らせ、千鶴の中に種をほとばしらせた。
「千鶴っ…」
愛した女に開放する瞬間の悦びが黒く駆け巡った。
体中から絞り出す、一瞬の快楽、悦楽を味わった。
至福の瞬間をたっぷりと味わう。
充足感で、脱力しそうになった。
繋がっているところに、目を落とす。
そこから、赤の混じった液体がこぼれ、千鶴の体を汚していた。
動かなくなった斎藤に、千鶴の眉根が少しずつ開き呼吸が落ち着いていく。
それでもまだ早い上下を繰り返す乱れた襟から引き摺り出された乳房を見ながら、斎藤はゆっくりと、己を千鶴の中から現実へと引き抜いていった。
抱いた
。
えも言われぬ満足感だった。
薄紙を懐から出し、そっとその汚れをふき取ってやる。
千鶴はピクリと震えたが、力が入らぬのか、されるがままで動かなかった。
「…大丈夫…か?」
散々自分勝手に動いておいて尋ねるのは欺瞞だとは思うが、様子が気になった
。
千鶴がうっすらと目を開き、その目に斎藤を認める。
「……………はい」
千鶴は返事を返すのがやっとの風情だった
。
ゆっくりと足を閉じたが、乱れた襟も裾も直せず、ぐったりと横たわっている。
しかし、直してやる気になれない。
まだ、顕な肢体を見ていたい。
斎藤が千鶴の横に寝転がると、千鶴はやっと、のろのろと襟を直そうと動いた。
その手をとどめる。嫌がるかと思ったが、千鶴は大した抵抗もなく手を止めた。
千鶴がうっすらと目を開き、その目に斎藤を認める。
斎藤の目が自分を見ている。
「……恥ずかしい…見ないで、下さい…」
斎藤の目を避けようとするが、やはり力が入らぬらしい。
わずかに顔を下方に向け、目を閉じかけた。
「…見たいのだ」
恥ずかしさを耐えているのか、切なそうに、千鶴の眉根が少し寄った。
斎藤は仰向けになっていた千鶴の体を自分の方へ向けた。
そして子供が甘えるように、千鶴の胸の柔らかい肉に頬を埋めた。
千鶴の腕が、そっと斎藤の頭を抱く。
斎藤は更に千鶴にすり寄り、短く言った。
「眠れ」
腕の中に斎藤を閉じ込めている。
この人は私のもの。
「……はい」
愛しい人。
下腹部に残る重い違和感が、これは夢ではないと教えてくれる。
あなたと共に。
最後まで、一緒に。
目を閉じると、千鶴はぷつりと切れた糸のように眠りに落ちた。
END