◆ 雪月華 【3】斎藤×千鶴(本編沿) 完結

□斎藤戦死誤報顛末
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【斎藤戦死誤報顛末 2】



「……千鶴」
「もう大丈夫そうですね。下りますか?」



どうやって?



枝から地面まで10メートル近い。



「……ああ。だが……」
飛び降りたら骨折はするだろう。
羅刹だから治るだろうが……。


千鶴は提げ緒を枝に巻き付け、下げた。
「すみません、提げ緒、無くなっちゃいますけど良いですか?」
「それは構わないが」
「手袋、しっかりして降りて下さいね」
「は?!」
そう言うと、千鶴は提げ緒を握り、幹に足を付けると、ゆっくり降りていった。

だが提げ緒は高さの半分程しかない。

斎藤が見守っていると、そこから千鶴は、ひょいっと飛び、降り立った。



……どういう事ですか、千鶴さん。



「刀落として下さいー!」

投げ落とした刀を、千鶴はしっかり受け止めた。

「斎藤さん、どうぞー!」
下から千鶴が呼んだ。



どうぞと言われても。



待て。
すっごく高いぞ、ここ。
紐、すっごく頼りないぞ。



ぶっちゃけ怖い。



千鶴の手前、斎藤は恐怖を抑え込んで降りだした。

途中で提げ緒は無くなり、この先は飛び降りるしかない。



「飛んで下さーい」



なんですと?
いや、それしか方法無いけれど。



斎藤は提げ緒にぶら下がり、地面との距離を精一杯縮めた後、手を離した。
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