◆ 雪月華 【3】斎藤×千鶴(本編沿) 完結

□はじめくんの生体実験
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【はじめくんの生体実験 2】



やはり、そうなのか?
だとしたら。



千鶴は斎藤の腕の中で、随分と粗い呼吸を繰り返している。
斎藤はつい、小さく、クスクスと笑った。



だとしたら。
千鶴は“感じる”と香りを放つのだ。
それも、“どのように感じているか”によって香りが変わる。
濃密な甘い蜜の香り。
あれは千鶴が随分と前から“女”だったという事か。
男冥利に尽きるな。




「……笑わないで下さい……」
口付けだけで崩れ落ちたのを笑われていると思った千鶴は、拗ねたような小さな声で言った。
だがもう、怒る千鶴すら可愛くて愛おしい。
「すまぬ」
そう言いながらも、斎藤は笑っている。
「…………もうっ。笑うのやめて下さい」
まだ笑っている斎藤に千鶴は困ったが、斎藤がこんな風に楽しげに長く笑うのは珍しい。
千鶴は仕方なく笑われておく事にした。



ひとしきり笑った斎藤は、千鶴の髪に顔を寄せた。
「戻るか」
斎藤のその言葉に、千鶴が顔を上げた。
「あの…でも、血を……」
「要らぬようだ」
体が軽い。
「我慢、なさらないで下さいね?」
「していない」
心配そうな千鶴に笑みを返した。
千鶴を抱いたまま立ち上がると、斎藤はそっと千鶴を解放した。
「歩けるか?」
「……はい」
まだ心配そうな千鶴の手を取り、斎藤は自陣へと歩き出した。






歩きながら、斎藤は何故血への欲求が消えたかを考えていた。

どうやら自分は、旧型の羅刹とも新型の羅刹とも違うようだ。
千鶴は鬼だという話だから、人とは違う身体をしているのかもしれない。
千鶴の醸す甘い匂いで、血への欲求が満たされるのだから。


……千鶴は、思いを寄せる相手には常にあの甘い香りをたてるのだろうか。
……それは。
知りたくない。




陣に戻る直前の闇の中で、斎藤は千鶴に軽い口付けを1つ落とした。
恥じらう千鶴から、透明な、草木のような綺麗な香りが立った。

何があろうともう手放さない。
何があろうと守る。
強い気持ちが吹き荒れた。





……ところで、この香りは他の者にもわかるのか?


千鶴のこの香りを他の者に知られるのは嫌だ。
試したくも無い。




斎藤は、人の居る所では決して邪な事はすまい、と心に誓った。



――――――――――――――――



至上の一対。



っつーか、ムッツリ独占欲魔神斎藤参上……?
嗚呼落とさずにいられない…。

斎藤さんの、刀無き武士論の過程を深掘りするのは諦めますた。
エロ気味コミカル路線でいきますわ。
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