◆ 雪月華 【3】斎藤×千鶴(本編沿) 完結

□勧酒
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【勧酒 2】




「斎藤。動揺が顔に出てるぜ」
「だ、だから、何の話だ」
「千鶴の話だよ」
原田は真っ向切りだ。
「甲州から戻るまで、ずっと二人きりだったんだろ。
いくらお前でもさすがに自分で気づいたろ」
斎藤は耳まで赤くして俯いた。
「……」
ボソボソと斎藤が何かを言ったが聞き取れない。
「ん?」
「あんたは…」
原田は、珍しく年下らしい可愛げを見せた斎藤の、言いにくそうな言葉の続きを待った。
「あんたは、女が好きだろう」
斎藤の誤解を招きそうな物言いに、原田は訂正を入れた。
「好きっちゃ好きだけどよ?
見境無しって訳じゃねぇよ」
「……どうして女に手を出せるのだ」
「はぁ? そりゃお前、可愛い奴だと思ったら触りたくなるだろ?
お前は違うのか?」

随分と青臭い事を言い出した斎藤に、半ば呆れ、半ば可愛く思った。

「……俺は羅刹に……」
「関係無ぇだろ、千鶴には」
「………………名を出すな」
斎藤にとっては一世一代の相談らしい。
絞り出された声に、そう見て取った原田は真面目に聞く事にした。
「羅刹だから手ぇ出せねぇって話か?」
「……羅刹の毒のせいか、あんたが言ったような事のせいか、わからん」
「羅刹じゃなくたって、男なら思うだろうがよ?」
「……羅刹の発作が起きた時が酷い」

原田は目を瞬かせた。
明日には出ていく予定だったが、それどころでは無いような話だった。
下手をすれば斎藤は千鶴を、二重の意味で襲いかねない。

「お前は血が欲しくなると女が欲しくなるのか?
羅刹になっちまってる奴等が女を狙うって話は聞かないが…。
甲州で見た奴等も、千鶴に目の色変えたりはしなかったしな…」
「俺もそんな話は聞いていない。だからおかしい」
「吸血衝動が起きると女が欲しくなるのか」
斎藤が一回り小さくなる。
「違う。一人に…だけだ」
「どういうこった?」
「………………。」
言いにくいようで、斎藤は俯いたまま黙りこんだ。
「…………一人の時には、顔が見たくなる。傍に居るときには…触れたくなる」
斎藤は何かに気づいたように顔を上げた。
「いや!
触れたくなると言っても!
いや、全く無いとは言わぬがそれはそこまで即物的で急を要する欲求……ではなく……っ、も、ないが、なんとか抑えてはいる…のだが…」



………………ごっそさん。



原田、心の呟き。



つまり、発作で苦しいときに千鶴を思って耐え、
傍に居たらすがり付きたくなっちまう、欲しくなるって話じゃねぇか……。



「お前はさ、大丈夫だよ」
「……何故」
「羅刹じゃなくたって、病気や弱ってる時にはそう思うもんだろ?」
「そう……なのだろうか…」
ここ暫く体調を崩していない斎藤にはよくわからなかった。




斎藤の言葉は極端に要約されている。
実際に斎藤が感じているのは原田が思ったような生易しいものでは無かった。
斎藤の自制心、集中力は人並み以上であるが、
それでも強い衝動に体が動きそうになる。
仕事上の説明には長けた斎藤だが、自分の問題を人に話すのには慣れていなかった。

しかしそれでも、自分の問題を誰かに話す事が出来るようになったのは、斎藤の変化の一つでもあった。
また話す事によって得られた原田の見解によって、
気が軽くなると言うか、今回の場合は深刻になりすぎずに済んだ。




羅刹の毒は実際はもっと複雑な問題も抱えてはいるのだろう。
とは、思うが。
原田には他に、直近の現実問題として気になる事がある。


「そうだろ。
それより斎藤、お前って女喜ばせた事あるのか?」

「……………………ハ?」

斎藤の、鳩が豆鉄砲を食らった顔という、非常に貴重な表情を原田は見た。



その時、永倉と千鶴、二人の足音が近づいてきた。
原田は斎藤を部屋の隅に引っ張り、二人で壁に向かって●ンコ座りをし、ボソボソ話し出した。



「失礼しまし……た?」
誰も居ない部屋の隅にワザワザ移動し、
壁を向いて内緒話をする斎藤と原田の背中に、千鶴と永倉は驚いた。

「今良いところなんだ、ちょっと二人でやっててくれ」
原田は振り向いてそう言うと、斎藤の肩を組み、再びこそこそと話し出す。
千鶴は、原田の熱心な様子と、
斎藤が随分緊張した面持ちなのが気になった。



思っていたのとだいぶ違う方向の話になったけどよ。
良い置き土産が出来て良かったぜ。



原田は割と満足。
斎藤は糞真面目な顔で、原田の話を現在脳内にて咀嚼中である。

「まァ、万が一の時には、せめて満足させてやれや」
斎藤は、ポン、と背中を原田に叩かれ、
今の今まで何の話をしていたか我に返った。
「……万が一には満足………。
さ、佐之っ! からかうな!」
「真面目だせぇ、俺は。
やっちまいました、泣かれましたじゃ男がすたるだろ?
満足くらいはしてもらわねぇとな」
原田は至って真面目だった。

ぐらぐらぐらぐらぐら……

斎藤はいっきに、酒のせいか、話のせいかわからぬ酔いを感じた。



――――――――――――――――


悦ばせ方、原田さんが直伝……。
威力を発揮するのは結婚後?


つまり、即物的で急を要する欲求があるらしいですよ、斎藤さんに。

……嗚呼シリアスになりきれない…。

着流し斎藤さんのンコ座り。
正面から拝みたい。(タヒね)
……何故斎藤さんだけ着流しなんだろう。
チラリズムお色気担当?
美麗な土方さんがちょっぴり年令が上で露出少ないから、代打?
斬り合いで踏み込んだら、太股バッチリだよね?
江戸っ子気質?
褌してたら尻丸出しでも平気な人?

襟巻で鎖骨さえ披露してくれないのに、下は出しても平気なのか、斎藤?!
自信があるのか、斎藤?!
ありがとう! (だから、タヒね)

斎藤さんは魅力がイッパイ。
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