◆ 続・妖怪ハンター“S”

□3.悪霊退治の事【1】
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【悪霊退散 1】




「ん。打ち合わせ始めよっか」

後藤が声を掛けると、
それぞれが自分の机の椅子を持って後藤の周りに集まった。
それを見て斎藤も同様に椅子を、車座になった面々の後ろに置いた。
特殊な仕事を担当するこの部署で、ごく普通の人でしかない自分には一体、
仕事があるのだろうかと疑問に思える。
ただ、警官は休みが取れないほど忙しいと聞いていたので、
この部署が暇そうなのは有り難かった。

「今日は空き屋敷のお掃除だね」
「楽な奴?」
「ん。多分いつもの感じだと思うよー。
夜中に明かりがつくとか、人影が見えるとか。
中に入ると女が居るとか」
「ジョンの出番無しだな」
「だねー。みんな頑張ってねー」
「ん。じゃ、行こうか」
「近いのか?」
「ん。ここから……1時間位かな?
お昼にかかっちゃうけど。
あ、ごろちゃん、馬乗れる?」



……馬を使えるのか。
豪勢な部署だな。
馬は随分と昔に乗ったきりだが……。
なんとかなるだろう。



「上手くは無いが」
「ん。じゃ、並足で行こうね。
早速行っちゃおうか」
後藤がそう言うと、椅子を片付け部屋を出ていく。



……これで打ち合わせは終わりなのか?
さっぱりわからぬ。



しかしまだ二日目。
仕事としては実質初日。
斎藤は黙々と2課の面々の後ろからついていった。



**********



馬で移動し、1時間強。

「ここ? ……典型的な感じだね」

大きな武家屋敷だった。

「じゃ、ちゃっちゃと済ませてとっとと帰るか」
「そうだねー」

つっちー、みっちゃん、ともちゃんは馬の手綱を後藤に渡すと、
屋敷の方へと歩いて行った。

屋敷の入口前で、みっちゃんが足を止めた。
「……なんか変」
「……別のモンが居るな」
つっちーとみっちゃんが言うと、ともちゃんが屋敷の扉の前で呼びかけた。
「誰か居られませんかー!
警察ですー!御免下さいー!」
と、屋敷の中でバタバタと音がした。
「……これ、人間居るでしょ……」
「どーしよっかね?」
「鍵はかかっていませんね。入りますか」
「だな。後藤サーン! 中に人間居るみたいなんだけどー!」
「や。参りましたね」

少し離れていた後藤は、馬の手綱を近くの木に掛けると、
屋敷の方へ歩き出した。
ジョンがついて行くので、斎藤もそれに倣う。

「ん。私と、ジョン君と、ごろちゃんで見てきますよ。
あ。サーベル忘れた」
「課長なんてサーベル持ってても意味無いじゃん」
「それはそうなんですけどね。
正式な装備ですからね。
みっちゃん、貸して……って、みっちゃんも持ってないじゃないですか」
「使えないもん」
「標準装備なんですから、装備はして下さいね。
じゃ、ジョン君、入ったら左にね。
私とごろちゃんは右」

「え?課長も行くの?」
「ごろちゃん初日だしね」
「……けどよ。ごろちゃんにとっても足手まといだと思うぜ?
ごろちゃんは妖刀作っちまう腕なんだし」
「だから大丈夫かな、と思うんだけど。駄目かな?」
「ごろちゃんに聞けよ。
ジョンは当てになんないんだし」
「ごろちゃん、どうだろう?」
斎藤は僅かに目を細めた。
使い物にならないなら待機して貰いたいものだが、
屋敷からの気配は大きくはない。
「問題無い」
「ヒュウ。頼りになるねぇ」

「ん。行こうか」
後藤は大して警戒もせずに扉を開けた。
その無防備さに、斎藤はヒヤリとした。
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