◆ 斎藤×千鶴(転生パロ) +SSHL

□SSHL【3】
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【SSHL 11】



風呂から出た後、千鶴は斎藤がダイニングテーブルで勉強をしているのを見つけて驚いた。
いつもは部屋にこもって勉強している……のだと思う。
顔を上げた斎藤は、どう反応しようか戸惑った後、大きくない声で「おかえり」と言った。
「お先に頂きました」
そう返事をすると、微かな笑みが返ってきた。
あまり表情を崩さない斎藤の笑みを見ると心が高鳴る。
これだからお客様扱いが続いていてもここを出て行きたいと思えないのだ。
とは言え、勉強中の斎藤に話しかけるのははばかられる。
千鶴はまっすぐ自分の部屋に向かった。



……うーん。やっぱり見張られてる?
何かやったかなぁ……。



気にはなるものの、今は編み物をしたい。
斎藤の邪魔にならないように部屋にこもった。
しばらく編み物をして、千鶴はそのまま寝てしまった。


**


翌朝。



……また見張られてる……。
ううう、緊張する……。



家の中を動き出す回る度に斎藤の視線が絡んでくる。
千鶴は奇妙な心持ちで学校へと向かった。


**


千鶴を見送った斎藤は、玄関で膝を抱えてしゃがみこみ、小さくなった。



分からん!
クリスマスプレゼントに何を贈ったら良いのか分からん!
日常の中で使えるものなら負担にならぬかと思ったのだが。
千鶴を見ていれば何か使えそうな物が見えてくるのでは無いかと思って見てみたが、
さっぱり分からん!



「…………。」
斎藤は千鶴を見送った玄関先で丸まり続けた。

どげしっ。

背中を蹴飛ばされて、大きく息を吐いてから顔を上げた。
不満そうな母親が見下ろしていた。
「……母さん。人を足蹴にするのは良くないと何度も言っている」
「朝っぱらから景気の悪い空気放ってるのが悪いだろ。
玄関から嫌な空気が来るから何かと思えばアンタとは。
ひと蹴り入れたくもなるっての。
それに、蹴ったってびくともしないアンタのその安定感もちょっと腹が立つわ」
「……それは八つ当たりではないのか」
「八つ当たりよ。確認するまでも無かろ?」
母親はさっさと斎藤に背中を向けた。
しっし、と追い払う手つきをしつつ言った。
「ウダウダしてる位なら行動、行動」
斎藤はのっそり立ち上がった。
そして母親の背中へとはっきり言い切る。
「行動は、しているっ」
何とかプレゼントを決めようと千鶴を観察した。
「なら、次の行動」



……次。
知恵を借りるか……。



斎藤は目の前の人物に尋ねてみた。
「……。母さん」
リビングへのドアに手をかけた母親は振り向いた。
「クリスマスプレゼントは何が良いか」
斎藤の問いに、母親は足も止めた。
「いつもと同じで」
「……物では、何か無いか?」
「いらなーい。自分の物は自分で選びたい。
アンタのセンスには全く期待してない」
「…………。」
斎藤は多少凹みつつ黙った。


同感だな。



斎藤は深く溜息をついた。
だから、クリスマスプレゼントも日常生活の中で
消耗していく物が良いのでは無いかと思ったのだが。
その斎藤へと、淡々とした母親の声が掛かった。
「本人が居れば物なんか要らないんだよ、はじめ。
アンタが生まれただけで母は幸せ。
だから今年も“お疲れ様”って言って笑ってくれりゃ良いよ」
「……。」
斎藤は気恥ずかしくて熱くなってきた顔を母のから逸らした。
母親は斎藤を横目で見て微かに笑って、斎藤に背中を向けて置き去りにした。
そう言う母親は毎年、気の利いたプレゼントを投下してくる。
去年は司法試験合格者を紹介され、試験勉強についての助言を貰った。
一人にされ、顔の熱さが引いてからやっと、斎藤は顔を上げてリビングに戻った。
リビングに戻ると斎藤はスマホを手にして検索をした。
しばらく画面を弄り回した後、遅刻しそうな時間だと気付いて
慌てて大学に向かった。
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