◆ 斎藤×千鶴(転生パロ) +SSHL

□北へ走る 11
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「ただいま帰りました」
「お帰り。 おや、日焼けしたね」
「はい! 海に連れて行って頂いたんです。 水も浜も綺麗なのに、人が凄く少なくて。
一度あんな所に行ったら、東京の海なんて行けないです」
千鶴は嬉しそうに言った。

「とても楽しかったんだね。あれ、千鶴ちゃん水着なんて持っていたかい?」
「途中で買って頂いたんです」
「そうかい。良かったね」

「はい! 私、お洗濯してきちゃいます。 海の水ってやっぱりべたべたしますね。
斎藤さんのも貸して下さい、一緒に洗っちゃいます」
「い?! いや、いい、自分で…」

「大丈夫です、洗濯機がやってくれますから。井上さん、シャワー使って大丈夫ですか?」
「もちろんだよ」
「だ、そうです。 斎藤さん、行ってきて下さい」
慌てて手を引っ込める斎藤の手にあったビニール袋を千鶴はさっくり取り上げて、奥へと行ってしまった。

「…随分元気になったねぇ」
よく喋るようになった千鶴を見て、井上は一を見上げた。
「そのようです」

「どんな魔法を使ったんだい?」
「…少し居眠りしてしまったのですが…起きたらあんな感じで…」
もてあましているような一の顔だった。

「…手は出さなかっただろうね?」
「持ち上げて海に投げました」
相変わらず一の顔は真面目である。
「それだけであんなに元気にはならんだろう?」

一は考え込んだ。
「…小さい子供が居たので一緒に遊びました」
どうやら本当に思い当たる事はないらしい。 
「女の子ってのは、わからんねぇ…。 うちは男の子だったからなぁ…」
「…そうですね」
深い深いため息を一が漏らすのを聞いて、井上は一から秘密を聞き出すのを諦めた。

「お風呂行っといで」
一は軽く会釈をして歩き出した。
「今夜は平助君も呼んでおいたから。 今夜はみんなでご飯にしよう」
「わかりました」
井上に返された一の微笑は柔らかい。平助の来訪は歓迎らしい。

「……ありゃ、本当に何もなかったんだねぇ。 甲斐性無しなのか、鈍いのか、優しすぎるのか…。
私でも若いころは……」

井上は一人ごちたあと、奥へと戻った。
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