◆ 突発企画 2016

□(幕末)Yo bailo 【6】
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【Yo bailo 46】



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屯所に戻った近藤は、すぐさま土方に部屋へと引っ張られていった。

「どうしたんだ、トシ?」
「千鶴の奴、十八だってんだ!」
「……何がだ?」
「年だよ!次の正月で十九だってんだ、松本先生がそう言ったっ」
「……松本先生がいらしたのか?」
「ああ!それで、……」
土方は自分が急いている事に気付き、息をついて自分を落ち着かせた。
それからは腰を落ち着け、松本が来て話していった事を近藤に伝えた。




話を聞き終えた近藤は腕を組んで深く考え込んだ。
「どうするよ、近藤さん」
「うーむ……。斎藤君も平助も俺には同じ位可愛いからなぁ……」
「……悩んで欲しいのはそこじゃ無ぇよ」
「む?」
「本人に確認した話じゃ無ぇが、千鶴は斎藤に惚れてるよ。
斎藤も千鶴の事は可愛がってっから、そういう事だろうよ。
だから悩んで欲しいのはそこじゃ無くて、
千鶴にどうやって話を持っていくかだよ。
綱道さんのこんな話を千鶴にするのも可哀想っつーかよ……。
何も確かな事も無ぇしな」
「む。それは簡単じゃないか、トシ」
「はあ?」
「綱道さんの話は抜きにして、単なる斎藤君との縁談として話せば良いのだろう?」
「…………」
「悪い組み合わせでも無いし、斎藤君の妻となったならば
雪村君が羅刹の事を漏らす心配も要らない。
綱道さんの思惑は分からんが、松本先生が雪村君の親代わりを買ってでてくれている。
まして斎藤君たちが密かに思いあっているのなら
これこそ我々の出番じゃないか。
いやいや、めでたい話だ。
鬼とて、雪村君が結婚してしまえば諦めるやもしれん。
早速斎藤君に話してこよう」
そう言うと近藤は笑って立ち上がって、部屋を出て行ってしまった。



……ちょっと待て?
そんな簡単な話だったのか?これは。
俺は何を考え込んで……?



近藤の話の問題点は別段思いつかなかった。


**


「斎藤君。ちょっと良いかね?」
「局長?!はいっ、ただ今っ」
斎藤は急いで障子を開け、招き入れた。
斎藤の部屋を訪ねた近藤はにこやかに話し出した。
「今日松本先生がいらしてね、雪村君の話をトシがしたそうなんだ」
斎藤は相槌を打ったが、何の話かと思った。
「我々もうっかりしていたのだが、雪村君も年頃の娘さんだ。
松本先生によると、その上今十八だというんだな。
それでどうだろう。斎藤君。これはまだただの打診なのだが、
雪村君を嫁に迎える気は無いかね?」
「…………は?」
「婿取りか嫁とりかという事や、鬼などという連中の事やその護衛の問題もあるから、
これらが解決するなら、という前提での話なんだが。
まずは本人の気持ちを聞こうと思ってね」



こ、これが世に聞く“上司からの見合い話”というものかっ?!
よもや俺などが経験するとはっ。



まずはそこで驚いた。
「前に見た娘姿の雪村君は実に可愛らしかったと思うのだが、
斎藤君はどうだろう?」
「は? はっ、いえ、はい、同感です」
「それに気立ても良い。良い嫁さんになると思わんかね?」
これに関しては全く異論は無い。
斎藤は近藤の目を見て言った。
「同感です」
「そうか。では雪村君にも話してみよう」
そう言うと近藤は立ち上がった。



は?!
話はこれで終わり?!



戸惑っていると、近藤は迷い無く部屋を出ていった。



……今の話で、俺は千鶴を嫁に貰うことになったのか……?



まさか、とは思うが、そういう話だった気がする。
そういう話だった気がするが、ハッキリした返事はしていないはずである。
また何か話があるだろうと思った。
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