◆ 突発企画 2014 (上半期)

□(幕末)君の尻尾【1】
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【君の尻尾 1】




「っ!」
「あっ!」

巡察から屯所に戻り、歩きながら斎藤と話している最中。
土方に名を呼ばれた千鶴は、勢い良く顔を声の方に向けた。
その時に、高い位置で結っている髪が、何かにビシリと当たった感触を得た。

「すすすすみませんっ!!」
千鶴の髪がはたいたのは、今の今まで話していた斎藤の横っツラ。
千鶴は青くなって、勢い良く、深く頭を下げた。
と、今度は頭を下げた勢いで、毛先が再び斎藤の顔に当たった。
「…………すみません…………」
千鶴は頭を下げたまま、もう一度謝罪した。



ど…………
どどどどどうしよう…………っ!
斎藤さんに髪ぶつけちゃったよー!
しかも、しかも顔にーーっ!!



「問題ない」
頭上から降ってきた落ち着いた声に、
千鶴は腰を折ったままそうっと
上目使いに斎藤を覗き見た。
斎藤は小さな苦笑いといった顔で、千鶴は心底ホッとした。

斎藤がこのような事で怒るような人物では無いことは、千鶴ももう知っている。
だが、やはり。

「大丈夫だ。土方さんが呼んでいる。
行くと良い」
「は、はいっ!」



すみませんー!
いつか、なにか、なにかお詫びを……!



土方の方へ走りながら、千鶴は心に誓った。
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