◆ 突発企画 2014 (上半期)

□(現代)2014 豪雪バレンタイン
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【2014バレンタインデー企画】



父宛のバレンタインデーのチョコレートケーキを買った千鶴は、駅前のバス停を見た後、空を見上げた。
白い雪が落ちてきている。
それも、いい感じに横殴りに吹雪いている。


例年作っていたが、今年は食べてみたいチョコレートケーキがあったため、バスと電車で一時間ほどかけて来たのだが。
天気予報より三時間も早く降りだした雪に、千鶴はため息をついた。
さっきからしきりに、バスが遅れているとアナウンスされていた。

バス待ちの行列は長く、乗れば大混雑間違いない。
ケーキの箱はかなり迷惑になるだろう。

千鶴は、タクシー乗り場をちらりと見た。
まだ続々とタクシーは来ており、タクシーを選択するなら今決断すべきだろうと思われた。
しかしタクシー代を考えると、高校生としては躊躇ってしまう。
千鶴はバス停に向かおうとした。



「防具があるんだ、バスは……おい、総司!」
人の声になんとなく千鶴は振り向いた。

声の主は若い男で、ちょうど電話を切って画面を見詰めているところだった。
防具、と言っていたが、大きな荷物は剣道の防具らしかった。

まっ黒い髪に彫刻のような整った顔だち。
その美しい造形に思わず目を止めた。
と、その男と目が合った。
そのまま逸らすのも失礼な気がした千鶴は、軽い会釈をしてバス停へ体を向けた。
「あんた!」
「へっ?!」
「そのバス停って事は方向同じはずだ。
タクシーの相乗りを願えないか?!」
「……私、ですか?」
「ああ、あんただ。手持ちが少しばかり足りないのだ。
今あんたもタクシーと迷っただろう?」

千鶴は小首を傾げて少し考えた。
バス停には既に行列。
遅れているというから、何時間待たされるか見通しが立たない。


タクシーだから、知らない人の車に乗る訳じゃないもんね。
お願いしようかな。


返事をしようと息を吸った時だった。

「い、いや、これは別にナンパなどではなく、
俺もあんたも荷物がある故、互いの利益になると思っただけだ。
俺はC大学の学生で斎藤という。
生憎学生証は持ち合わせていないが、問い合わせて貰っても構わない。
だが、あんたが相乗りなどが嫌いだったなら、余計な事を言い出して済まなかった」

斎藤はつい、言い訳のように言ってしまった。
小首を傾げた少女……と言っても、高校生位の年頃の女性で、しかもかなり可愛い。
いっきに緊張した。
普段男ばかりに囲まれた生活をしていた斎藤は、正直、声をかける相手を失敗した、と思った。


一気に語られ面食らった千鶴は、目を大きく見開いて男を見た。

いい人そうだな。

なんとなくそう感じた。

「お願いします。助かります」
千鶴はペコリと頭を下げた。



体を起こしニコリと笑みを見せた千鶴に、
淡い茶色を含んだ大きな瞳が綺麗だと思い、斎藤はドキリとした。
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