◆ 雪月華 【3】斎藤×千鶴(本編沿) 完結

□堰
1ページ/4ページ

【堰 1】



斗南。



斎藤の求婚を経て、斎藤千鶴となった千鶴だったが。
盃を交わした夜から、斎藤はある面で非常に素直に自分を出すようになった。
その斎藤の一面に、千鶴は正直、かなり驚いた。

つまり。


かなり、好色。




想いを通わせ、戦も終わり、共に暮らすようになってからは、
そういう事が無かった訳ではない。
それまでは、二人で共に気分が高じた流れで事に至っていたのだが。



斎藤さんにとって、結婚って、褥を共にする事なのかな……?





実は、盃を交わして以降のこの三日、千鶴はろくに蒲団から出ていない。
斎藤の相手で力を使い果たし、翌日起きれないのだ。



それを見越していたのか、贖罪のつもりかわからないが、
斎藤は千鶴が眠っているうちに米を炊き、千鶴の分もお握りを作ってから出仕してしまっていた。
夜も、千鶴を制して、片付け、皿洗いを手早く済ませてしまった。



これが3日も続けば、千鶴としては、さすがに申し訳なさで一杯なのだが。
言い出せないでいた。



……だって、斎藤さんが、あの日から、何だかとっても嬉しそうに帰ってくるのよね……。



千鶴は複雑な気持ちでため息をついた。

斎藤が嬉しそうな理由は、1つしか思い当たらない。
なぜならあの日以降、千鶴がしているのは夜の相手だけだから。



…………い……いつまでこの生活が続くのかな……。



千鶴は夕食だけは何とか準備し、再び潜り込んだ蒲団の中でぐったりしながら思考を巡らせていた。

この3日は、千鶴の思っていた“結婚生活”とは、少し違う。
盃を交わす前の方が、余程、千鶴の思う結婚生活に近いのだった。





この日も、それまでよりはほんの少し早く、斎藤は帰ってきた。
仕事を早く切り上げた程の時間ではないから、
帰り道を急いだのだろうと思う。

「おかえりなさい、はじめさん。
今日もお疲れ様でした」
一緒に暮らし始めてから、結婚後、名前を呼ぶ事以外何も変わらぬ出迎えなのだが。
「ただいま、千鶴」
そう言うと、靴も脱がずに千鶴を抱き寄せ、千鶴の力が抜けきるまで深い口吸をしてきた。



……ここで私が脱力しちゃうからいけないのかな……。



しかし斎藤からこれほど求められれば嬉しいし、甘い口吸にとろけてしまう。

千鶴が荒くなってしまった息を整えているうちに斎藤は靴を脱ぎ、
火照り始めてくたりと力の抜けた千鶴の体を、当然のように抱き上げてしまった。
これも、この3日繰り返されている。


「は、はじめさん……」
恥ずかしくて俯きながら名を呼ぶと、抱き上げたまま口付が落とされた。
千鶴は、どうしたら良いかわからなくなり、大人しく斎藤に運ばれて行った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ