◆ 雪月華 【3】斎藤×千鶴(本編沿) 完結

□斎藤戦死誤報顛末
1ページ/3ページ

【斎藤戦死誤報顛末 1】



※蛇足な話です。
千鶴ちゃんの鬼能力開花のお話です。

※笑って許せる方だけどうぞ……。



――――――――――――――――



本当に読む気ですか?



――――――――――――――――



知りませんよ?



――――――――――――――――



マジですか?



――――――――――――――――


いきますよ?







母成峠。



斎藤と共に会津に残り、今斎藤と行動を共にしているのは元三番組の面々だった。

激戦の末、敗北確実と見た斎藤は叫んだ。

「逃げろ!」

退却、でも、下がれ、でも無かった。

その一言を正確に理解した元三番組の面々は、
斎藤の下知を守るべく必死に逃げ切った。



殿(しんがり)を務めていた斎藤は、最早敵の中に居ると言ってよかった。
味方が逃げたのを見計らい、自身も走った。
木々の中へ身を隠しながら走る。
途中、待たせておいた千鶴を拾って走ったが、今回ばかりは覚悟が必要に思えた。



千鶴だけでも隠して、自分が囮になるか……?



千鶴が絶対に納得しないであろう事を、斎藤が考え始めた時だった。



「斎藤さん! 腰の布と提げ緒を下さい!」
走りながら、千鶴の言葉に目だけを動かした。
千鶴の手を引いていた斎藤の手を、千鶴が強い力で脇へと引いた。



隠れるつもりか?
すぐ見つかる。



斎藤は覚悟を決めた。
千鶴の望み通り、腰に巻いていた紫の布と提げ緒を渡してやった。

大きな木の影に走り込んだ千鶴は、刀の提げ緒を2本と紫の布を一直線に結んだ。
「斎藤さん、方膝ついて下さい、ここ!」

何をする気かと思うが、尋ねる暇はない。
言われた通りにすると。

膝、次いで肩に、重みがかかった。



……どういう事ですか、千鶴さん。



膝と肩には、千鶴の雪駄の足跡がくっきり。



「上がって!」



上を見れば、千鶴が太い枝の上から紐を下げている。



……そこ、人間が飛んで届く高さじゃありません、千鶴さん。
羅刹でもムリ。



しかし斎藤はとりあえず紐を掴むと、それを利用して幹に足をつき登り始めた。



と。



手の中の紐が強い力で上へ引かれた。
体が宙に浮いた。



次の瞬間、千鶴を幹に押し付けるような体勢で枝の上に居た。



今、何をしましたか、千鶴さん。



千鶴は紫の布をほどくと、枝を折り巻き付け、木のすぐ下の急斜面へと遠く放り投げた。

布は途中で枝を手放し、斜面の木に引っ掛かった。



斎藤は、茫然としつつも、斎藤達を見失った敵がうろうろしているのを見下ろした。



「居ないぞ!」
「落ちたんだ! 布が引っ掛かってる!」
「じゃあもう良い!退却!戻るぞ!」



敵は去って行った。
それでもたっぷり様子を見てから。
と言うか。
斎藤が口を開くまでに、たっぷり時間を要した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ