◆ 斎藤×千鶴(転生パロ) +SSHL

□北へ走る 10
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食事を済ませると、一はまたスタスタと海へ向かった。

今度は腰の辺りまで海に入っていく。
千鶴を振り返って待っているようだったので、千鶴も水の中へと入っていった。
水は随分と冷たい。

「泳げるか?」
「少しなら」
「そうか」

そう言うと一はいきなり千鶴を横抱きにした。

冷たい水から一の体温に触れて、千鶴は驚いた。

「きゃあっ!」

思わず小さく悲鳴をあげた千鶴に
「まだ遊んでやっていなかったな」と言うと、一は沖に向かって千鶴を放り投げた。

千鶴は、想像以上の滞空時間を感じた後、派手なしぶきをあげて海へと落ちて行った。
慌てて水面から顔を出す。

「ひどいです!」
抗議したものの、悪戯が成功したような楽しそうな一の顔に、千鶴はそれ以上文句が言えない。

一は、千鶴が一の方へ戻るのを、いつもの微笑で待っている。

「斎藤さん、ひどいです!」
「一度やってみたかった」
「だからって私で遊ばないでください!」
「顔が笑っている。面白かったか?」

そう言うと今度は片腕で肩に担ぎあげ、海へと背中から倒れ込んだ。
一に抱え上げられている為、千鶴も一緒になって海へ倒れ込む。
高さがある分勢いよく投げ出された。

「もう! また!」
「悪かった。 もうやらない」
「…やる気ですよね?」
「……。もう一回やってみたい」

真面目な顔で千鶴に両手を差し出してくる。
乗れ、という事らしい。

「最後ですよ?」
「わかった」

千鶴が一に近寄ると、一は再び千鶴を横抱きに抱える。

千鶴はどきどきしながら、一の首に腕を回した。
一が勢いをつけて投げ出そうとした時、千鶴は腕にくっと力を込める。
「うっ」
投げ出せずバランスを崩した一ごと海の中へひっくり返った。

「やった!」
海面から顔を出した千鶴はガッツポーズを一に向けた。
傍から見れば、調子に乗った典型的なバカップルに見えているのだろうなと、密かに千鶴は思っている。



でも、明日には帰るから。
明日には、この人とはサヨナラになるから。
少しだけごめんなさい。



「…唇が青くなってきているな。少しあがろう」


千鶴を気遣って浜に上がった一だったが、レジャーシートに上に座ると眠気が来た。
片膝を抱いて立ててそこに頭をのせているうちに、うつらうつらしはじめた。

それを見た千鶴はつい笑う。
食べて、動いて、寝る。 
一は大人だ、と思っていたが、その姿は子供か動物のようで可愛いと思った。



沢山食べて、動いて、動けなくなったら沢山寝て、起きて、精一杯の事をする…。
それはきっととても健康的な事なのだ。
そうして、次の問題に向かっていく。
私もがんばろう。
帰っても、やれることをやって…部屋にカギをつけたり友達に泊めて貰ったり…できるだけの事をしよう。
そして、早くきちんと自立して。
自分が無茶をしていると気付かないこの人を、守れる位に強くなりたい。



「…斎藤さん、眠そうですよ。 膝枕しましょうか?」
「いや…大丈夫だ…少しだけ…」
薄く目を開くと、千鶴が見える。


………夢の中の俺。 あんたはどうやって千鶴を手に入れたんだっけ………。


「……ずっと、一緒に…」
ぼそぼそとした声で一は呟いた。
千鶴が驚いて一を見ると、一の目はすうっと閉じられていった。



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今回は親父と対決しているはずだったのに…
いちゃいちゃして終わってやがる。
そして斎藤さんの面影はすでに無いという…orz
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