◆ 続・妖怪ハンター“S”

□11.妖刀騒ぎの事
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【妖刀騒ぎの事 1】



夏、盆の終わる頃。

ある真夜中に、ボロ雑巾になった園田一という元三番組の男が東京の斎藤の家を訪ねてきた。
途中で路銀が尽き、空腹と疲れに、とにもかくにもと斎藤に助けを求めてきたのだった。
斎藤と千鶴は話し合い、当分離れを園田一に使ってもらう事にした。



盆明け。
一段落ついたものの、帰らずに居座った亡者や、
それらの勢いを借りたモノたちの引き起こす事件に特殊二課はまだ少し落ち着かない。



そんな話になったのは何故だったのかはもう分からないが、
朝の就業前の特殊二課の部屋では、斎藤の家に元部下の居候が増えるという話をしていた。
盆休みに斎藤が元新選組の者だと知ったつっちーは腕を組んだ。
元新選組の者ならば、人を斬っているはずだ。
「よく考えたらよ、ごろちゃんの元手下(てか)なら、そいつの刀も妖刀になってたり?」
つっちーが言い出した内容に、ともちゃんとみっちゃんは顔を見合わせた。
「……充分有り得ますが……」
「……妖刀二振り? 嫌過ぎ……」
ともちゃんはひとつうなづき、みっちゃんは腰に手を当てげんなりと天井を仰いだ。
つっちーは、座って書類を見ていた特殊二課の課長、後藤へと向き直った。
「なぁ後藤サン、確認しておいた方が良いんじゃねえか?」
「や。そうなんですか?」
「そうですね。何も無ければ無いで良し。正確な所は知っておいた方が良いでしょう」
ともちゃんが重々しくうなづいた。
「ごろちゃん、そいつ今日来てくれそうか?」
園田一はヨレヨレで、やっとひと心地ついた所なのだが、
斎藤は園田一の都合に頓着せず答えていた。
「今日は二課も予定が詰まっているのではないのか?」
「刀見るだけだろ。呼んで良いか?」
「構わんが、あんたが呼びに行く気か?」
「いや、ごろちゃんが」
そう言うとつっちーは白い紙を取り出した。
「またそれか。家人が驚く。明日で良ければ連れてくる」

斎藤とつっちーが話している間、考え込み、一度みっちゃんと目を合わせ、
何か互いに納得しあった様子のともちゃんが言った。
「いえ、ごろちゃん。早い方が良いです」
「私もそう思う。課長、良い?」
「や。皆さんがそう言うのならそうなんですね。
ごろちゃん、良いかな?」
「はい」
「じゃ、ごろちゃん、いつも使う道で迎えに行ってくれるか?」
「……その紙は道案内は出来ぬのか?」
「出来るよ。けど、いやーーーーな予感が山盛りしてきたから、
ごろちゃん、そいつのそばに居た方が良いぜ?」
「って言うか? 迎えに行ってあげないと、その人危ないよ。
今見た。その人、ここに来る途中で命運尽きるわ」
「……ハ?」
斎藤が耳を疑っている間に、後藤課長が珍しく素早く立ち上がった。
「ごろちゃん、馬使って!」
「っ、はいっ」
斎藤は部屋を飛び出していった。
「さて、呼ぶか」
つっちーは紙片に何やら呟くと、フッと飛ばした。
紙は揺れて落ちながら消えた。



それを見届けたともちゃがみっちゃんへと向いた。
「いやー、さすがみっちゃん、先読みには強いですね」
「まあねー」
ともちゃんとみっちゃんののどかな様子に、後藤課長は椅子に座りながら
二人を眺めて言った。
「……や。大丈夫なんですか?」
「ダイジョブ、ダイジョブ。今この話がでたって事は、助かるでしょ」
みっちゃんが軽く言った。
しかし命運尽きるなどという言葉を耳にして、呑気な気分ではいられない。
「……。……ジョン君、ごろちゃんについて行ってあげてくれる?
君なら大概の事故から守れるでしょう」
「ハーイ」
ジョンは軽く返事をすると、するりと姿を消した。
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