◆ 突発企画 2014 (上半期)

□(幕末)蛞蝓の気紛れな遊び
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【蛞蝓の気紛れな遊び 1】



西本願寺に屯所を移した春。


「江戸へ、隊士募集に行くんですって?
この伊東、土方君の為なら最大限に働いても良くってよ」
正直、伊東のコネに期待する所は大きい。
「…………痛み入る」
「でね、江戸までは遠いでしょう?
雪村君を連れて行きましょうよ!」
「役立たず連れてってどうすんだ」
「あら。道中、楽しめるじゃない?」
「楽しみてぇんなら永倉でも連れてけ」
「イヤ」
「……あ?」
「折角土方君と行くんですもの。
両手に花が良いわ」

花って何だ。
土方は眉間に1本皺を作った。

「じゃ、総司でも……」
「イ、ヤ!」
「……ああ?」
「あの子、体格良すぎでつまらないの!」
「……原田」
「あんな、いかにも男の色気な子、イヤ」
「……………………さ……」
土方は言い淀んだ。
斎藤を連れていくのは、漠然と、良くない気がするのだ。
「……とにかく、雪村はダメだ」
「じゃ、斎藤君にしましょう!
それなら文句は無いわよね?うふ♪」
「………………………………チッ」

斎藤を避けたのは嫌な予感という程度の理由なので、
土方は斎藤同行を飲むことにした。


こうして、土方、伊東、斎藤は、隊士募集の為に東下した。



******************



歩きながらも喋りまくる伊東に、土方は早々にキレかけた。
その後ろを歩いていた斎藤は、
土方の速い歩きに喋りながらついていく伊東を、
さすがに免許皆伝なだけあって体力があるな、などと思っていた。



初日の宿で、伊東は先制攻撃をした。
「さ、土方君。お風呂に行きましょうよ!」
「……お先にどうぞ」
「何言ってるのよ。こんな所のお風呂なんて、早く入らないと泥水になっちゃうわ!
考えただけで気持ち悪くなっちゃうわ!」
「……界隈で、一番の宿を取りましたがご不満でしたか」
「やぁねぇ。そういうお話ではないでしょう?
まさか見せられぬほど貧弱な体なのかしら。
それとも……」
伊東は流し目で土方を見た。
「見せられない跡でもあるのかしら」
伊東は、ここ数日土方が屯所から出ていないことを知っていて言っている。
男同士で楽しんだの?という含みを向けられたのだ。
土方はこの種の冗談が大嫌いだった。
「んな訳ねぇだろうが! とっくり見るが良い! 行くぞ斎藤!」



……短気……。



斎藤は溜め息をついて土方についていった。



伊東は似たり寄ったりの事を本陣だろうと旅籠だろうと連夜繰り返し、
土方の機嫌は日に日に悪くなっていく。
とは言え、この二人との道行きと知った時点で予想の範囲内。
斎藤は淡々とやり過ごしていた。
放っておいた。とも言う。
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