Hey Brother...

□Hey Brother...11
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まず初めにクリスの目に飛びこんできたのは、ヒョウの白い尻だった。
ヒョウがわずかに頭を後ろに傾けたので、横顔を見ることができた。
彼は口を開け、先ほどクリスが廊下で聞いたのと同じ耳障りなうめき声をあげた。


ヒョウの太ももの裏を覆うふたつの手、ヒョウの前にひざまずき彼のエレクションをくわえて頭をゆっくり前後させる人物、クリスがその存在に気付いたのははそれからしばらく経ってからだ。


タオだった。


タオはヒョウを見つめながら少し腰を上げ、彼を更に口の奥へと導いた。
ヒョウはタオの頭に手を置き、彼の動きを手助けしていた。


クリスの体は毒を打たれたように麻痺していった。
吐き気と虚しさが一挙に押し寄せ、血管を焼き尽くし、まるで誰かに生きたまま食べられているようだった。
強張った体が激しく震え、まっぷたつに裂けてしまいそうだった。


こんなの間違っている。
タオがヒョウにブロージョブをしている。
タオがヒョウにブロージョブをしてそれを楽しんでいる。


クリスは抜け殻になっていた。
もはや人間ではなくなってしまったようだった。
今鏡をのぞきこんだら、そこに何が映っているかすらわからない。


バシッと大きな音を立てて、クリスはタオの部屋に入った。
ふたりの男が、ドアが壁にぶち当たる暴力的な音に驚いて慌てて離れる様を見ると、クリスは快感にも似た気持ちを覚えた。

「何だよいきなり!?」

ヒョウは、ついさっきまでタオの口を犯していたエレクションを急いで下着にしまいながら怒鳴った。

「邪魔すんなよ!」

クリスは、ヒョウには見向きもせずタオだけを見ていた。
タオはひざ立ちのまま、挑戦的とも恥じているともとれる目つきでクリスを見つめていた。
タオの赤く腫れ上がった唇を見ると、クリスは無性に何かに爪を食い込ませ、それを跡形がなくなるまで切り裂きたくなった。

「出てけ」

クリスは、タオに視線を向けたまま頭だけをヒョウの方に傾け、食いしばった歯のすき間から声を出した。
ヒョウは呆れたように笑い声を立てた。

「何言ってんだよ。俺達はお楽しみの最中だ。お前こそ出てけ」

「いいから出てけ!」

クリスは自分でも気付かぬ間にヒョウの襟をつかみ、タオの部屋の壁に叩きつけていた。
クリスに殴られ一瞬止まった呼吸を取り戻すため、ヒョウは鉄の味が広がる口を大きく開いた。
クリスは彼に顔を近づけ、一語一語区切って伝えた。

「この家から出て行け」

クリスから解放されると、ヒョウはおどおどした視線をタオに移し、そしてまたクリスに戻した。

「どうでもいいけど、お前頭おかしいんじゃない?」

ヒョウは捨て台詞を残して部屋を出て行った。
数秒後、クリスとタオは玄関のドアが大きな音を立てて開閉されるのを聞いた。

「なんだよ?」

タオは拳の裏で口を拭いながら不機嫌そうに吐き捨てた。
今タオに口づけしたらヒョウの味がするだろう。
だけどクリスはそんなことしない。
タオに口づけなどできない。
なぜならタオは弟だから。
義理の弟だが、なんであろうとそんなことはできないのだ。

「俺がどうしたかって?」

クリスはユーモアの欠片もなく笑った。

「よく知りもしない奴にブロージョブしてたのは俺じゃないだろ」

「そうだね。あんたは好きでもない女を指でいかせるしか脳がないもんな」

「タオ!それとこれとは全然違う話だ!」

「何が違うの?」

「それは・・・」

お前は心に傷を負った子供で、女たらしの最低な父親に捨てられたことでヤケになってるんだろうけど、ヒョウは絶対そんなとこに目を向けないからだ。あいつが唯一目を向けるのは、自分をくわえてくれる口と、大きな目だけだ。あいつはお前みたいなもろい人間の扱い方を知らない。お前は粉々に打ち砕かれる。お前に必要なのは、お前がばらばらにならないようにつなぎとめてやれる人間だ。お前が必要なのは・・・。

「ヒョウが最低な男だからだ!あいつには近づくな、タオ!」

「あんたに関係ないだろ!」

クリスはこんなに激昂しているタオを見たことがなかった。
タオはクリスを部屋から押し出そうとした。

「僕だって自分のやりたいことをする権利があるんだ!」

クリスはドア枠をつかんで部屋から出まいとした。

「俺はお前の兄貴だ。弟の世話を焼くのが兄貴の義務だ」

タオはクリスをものすごい形相でにらみつけ、いきなり部屋に引き戻した。
やめろと言っているようだった。
兄弟を演じるのはやめろと。

「お前はまだ子供だ。ヒョウに利用されてるだけだ」

「そう言うあんたはいくつだった?初めてフェラされたのはいくつの時だった?」


サマーキャンプの時だった。
暑さをしのぐため、子供たちは掘っ立て小屋のようなアイスクリームショップでフローズンヨーグルトを買ってもらった。
そのアイスクリームショップの裏で、サラという名の女の子がクリスにキスをし、ハーフパンツの中に手を伸ばしてきた。
15の夏だった。
今のタオより一学年下だ。


クリスが考えていることを見透かしたようにタオは冷笑し、うなずいた。

「思い出しただろ?」

タオは再びクリスを部屋から押し出そうとしたが、クリスはそれに抵抗した。

「あいつとはもう関るな、タオ」

「なぜ?」

「そうしてほしくないからだ」


今ふたりがいるのは危険地帯だ。
彼らはもう何週間も、見えない危険が四方八方にひそむ地雷区域をそわそわと歩き続けていた。
間違って地雷を踏めばいいだけだ。
ふたりともそのことを知っていた。


タオはクリスに近寄って目を細めた。

「どうして?」

近い。
近すぎる。
短い言葉で会話することと、冷静さを装うことで避けようとしていた何かがその近さによって姿を現し始めていた。
タオの桃色の唇、大きく見開かれた瞳、クリスを見つめる瞳。
地雷を踏む一歩手前。
クリスがタオの視線を捕らえると、ふたりの間に地雷の火花が散った。


タオを乱暴にドアもとから離しドアを足で蹴って閉じると、クリスはタオの頭を両手でつかみ、桃色の唇に狂ったようにキスをした。
タオの唇の隙間から、苦くてしょっぱいヒョウの味がした。
それを全て消し去って自分の味で埋め尽くそうと、タオの口の中を舌でくまなく舐めとった。

俺のものだ!
誰にも渡さない!

タオはクリスの口に泣き声をもらしながら、自分の体を大胆に押し付けた。
互いの胸がぶつかり合うと、タオはクリスに押し付けるように腰をグラインドさせた。
クリスは吐息をもらし、更に激しくタオにキスをした。
ふたりで足をもつれさせながら歩いているうちに、ベッドのすぐ脇まで来ていた。
クリスはタオをベッドに押し倒し、上に覆いかぶさった。


体をもつれさせながら、クリスは自分の跡を残そうとタオの肌を舐めては吸った。
ふたりの下半身はベッドから飛び出して足は床についていたが、まっさかさまに罪へと堕ちていく爽快な感覚に捕らわれ過ぎて、どちらもその体勢を直そうとはしなかった。
タオの耳の裏から桃の香りがし、クリスはそこを夢中で舐めた。


こんなの間違っている。
タオは義理の弟なのだから、こんな風にベッドの上で抱きしめることも、腰をこすり合わせることも、耳に無意味な約束を囁くこともするべきではないのだ。
間違っているのに、自分の腰に足を絡めながらしなるタオを見ていると、クリスはモラルを喪失することを神から許されているような気がしてきた。
だから、弟思い切り抱きしめて腰を上下させ、その度に彼の体を揺さぶった。

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