Brothers

□Brothers 13・最終話
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タオは息をのんだ。
立場を気にしている余裕がなくなってしまったため、クリスの手がボクサーの中へ滑り込み、あっという間にエレクションに到達するのを止めさえしなかった。
絵に描いたようにすんなりと、クリスのささやかな策略にはまったのだ。

タオは実の兄に恋をしていた。
兄の低い声、顔立ち、引き締まった体、いたずらな性格、全てに溺れていた。
そしてそのために奈落の底に落ちようとしていた。
だけど奈落がこのように気持ちの良い場所であるのなら、喜んで落ちていきたかった。
貪欲に、そして官能的に膝を胸に寄せ、タオは淫らな泣き声をもらした。
クリスに覆いかぶされると、触れ合った部分に焼印を押されているように感じた。
クリスはタオの首筋を唇でなぞりながら、ビロードのような手で敏感な部分を愛撫した。

狂っている。
どう考えても狂っている。
それでも、生きるために空気が必要なのと同じように、タオにはこうすることが必要だった。
だからハーフパンツも自ら下ろした。
思春期に入ってから数え切れないほど自分でしてきたのと同じように、兄の手が、自分のエレクションを上へ下に動かしている幻のようにおぼろげな現実を、タオは細く空けた目の隙間から見ていた。
クリスは、重圧がかからないよう配慮しながら、タオの膝に座る体勢をとった。

「あぁ、クリス・・・」

タオは子供時代のことを思い出していた。
兄と一緒に庭に座って、緑とピンクのクレヨンで家族4人の絵を描いていたことを。

僕たちの両親・・・僕たちの血・・・僕の兄弟。

ふたりをわけへ立つものは、DNAの鎖のわずかな差のみだ。
ふたりは遺伝子と血液を共有していた。
しかし今、テレビの前に置かれたレザーソファーの上でふたりが共有しているのは、汗と唾液と口づけだった。

クリスはタオのシャツをたくし上げると、わき腹のラインを撫で、続いて腹筋に手を這わせた。

「あったかい」

と囁くと、手を上方に伸ばし、指先で乳首をこすった。
タオはクリスの下で背を弓なりにさせ、小さな悲鳴をもらした。

「これ好き?」

タオがうなずくと、クリスは満足げに微笑んだ。

「もっと速くしてほしい?」

タオは再びうなずいた。

「いい子だ」

手の動きが加速し、先っぽの部分に指で刺激を与えられると、背筋に震えが走った。
タオの目からぽろぽろと流れる涙を、クリスは優しい兄のまなざしで見据え、唇で受け止めた。
近親相姦と言葉にしてしまうと吐き気をもよおすが、タオはどうしようもなくそれを欲していた。

タオが再び泣き始めたのでクリスは手の動きを止め、甘い声で慰めの言葉をかけながら、タオを持ち上げてリビングを出た。
そしてそのまま階段を上り始めた。
冷たいリネンの上に下ろされた時、その部屋に明かりはついていなかったが、タオにはそこがクリスの部屋であることがわかった。

「ちょっと待ってて」

小さな声でそう言うと、クリスは引き出しの一番上を引っ掻き回して、小さな青いボトルを取り出し、それをナイトスタンドの上に置いた。

「後で必要になるから」

と言ってタオの首筋にキスをすると、シャツを脱がせた。
何もかもが突然過ぎて、タオが反応を示す暇はなかった。
特にクリスの手が再び元の位置に戻って動き始めると、何も考えることができなくなった。

小さな子供のように口を開け、舌で兄を味わった。
プラムソースとあひるの味がほのかに残っていたが、ラストノートはムスクだった。
ムスクを食べたことはないが、その香りを舌で舐めているような感じだった。
クリスにボクサーを脱がされ、タオはいよいよ全裸になった。
クリスは弟を見下ろし、愛情たっぷりの微笑みと温かい歓迎のまなざしを落とした。
タオはその笑顔を真似することはできなかったが、はにかんだ笑顔でクリスを見つめ返した。

「やめてほしい?」

タオが首を振ったのは、これで3回目だった。

「や、やめないで」

次のキスを受け入れ、兄が触ってくれるのを待った。
指が脇を通り抜けて骨盤へ下りていった。

「もっと・・・続けて・・・」

「わかった。でもまずはこれ舐めて」

2本の指が唇に触れると、タオはすぐにその意味を理解した。
タオがねっとりと舌を絡ませて指を舐めている間、クリスはタオの髪を優しく撫でていた。

「よし、もういい。上出来だ」

クリスがタオの口から指を引き抜くと、唾液が糸を引いてシーツに垂れた。
その指に更にローションをつけてからタオの脚を開くと、指を一本だけ挿入した。
タオが震えたのをクリスは見逃さなかった。

「やめてほしい?」

「やめないで!」

クリスは僕を愛してる。

タオはそれを感じたかった。
それがほしくてたまらなかった。
クリスは家族だ。
家族愛が特別なものであることは知っていたが、クリスとの間にあるものはそれ以上に特別なものだった。
唇にクリスの温かい唇がかぶさると、タオはむさぼるようにそれ吸いついた。
禁断ではあるが、決してゆるがない一本の線を軸とした愛情を感じ、タオの背筋をぞくぞくとしたものが這い上がってきた。
弟から指を抜くと、クリスはシャツを脱ぎ、続いてベルトのバックルを外し、ボクサーと一緒にジーンズを脱いで床に放り投げた。

「俺に抱かれたいだろ、タオ?」

タオはうなずいた。

「チャニョルのことなんか忘れさせてやる。俺のことしか考えられなくなるまでいかせてやるよ。お前は俺のものだ」

×××

タオとクリスは大粒の汗をかき、息を切らせてベッドに横になっていた。
兄がもう自分の中にいないと思うと、あまりにも淋しくて空虚だった。
兄がくれた甘ったるい愛を全身で味わっていたかった。
しかし、まぶたを重そうにさせたクリスは明らかに疲れきっていた。
だからもう一度抱いてほしいと頼む代わりに、タオは身を縮めて兄に体をすり寄せ、兄の胸に耳を押し当ててドクドクという鼓動を聞いた。

「どうした?」

クリスは吐息のような声で尋ね、タオの背中をさすった。

「痛かった?それとも・・・」

「違う」

そうくぐもった声で答えたが、結局起き上がってベッドの縁から床に足を下ろした。
背中が何か強烈なもので刺されているようだったが、あまりに恥ずかしくて、必要以上にクリスのそばにいることができなかった。

「安心して。母さんにも誰にも言わないから。今は一人にしてあげる」

きっとクリスは、あんなに激しく兄を求めた弟に嫌気がさしたはずだ。

僕は薄汚れた男娼だ。
しかも近親相姦の罪まで犯した、牢獄に入れられて当然の不潔な人間だ。

後ろから伸びてきた手に手首をつかまれ、ベッドに引き戻されると、タオの胸はぎゅっとちぢこまった。
クリスは、タオの汗ばんだ顔に爽やかなキスを惜しみなく与えると、「行くな」とつぶやき、タオを膝に乗せ、脚に毛布をかけた。

「ここにいてくれ。いいだろ?明日の朝になったらどうするか考えるから」

タオは、クリスが嘘をつかないことを知っていた。
タオの指が兄のブロンドの髪に分け入った。

「俺、中途半端な気持ちでお前のこと愛してるって言ったわけじゃないから」

それを聞いたタオは、野火のごとき無上の喜びに包まれ、クリスに熱烈なキスをした。
クリスの手に腰を締め付けられると、エネルギーが再燃されるのを感じた。
その手が太ももを柔らかく撫でるのを見て、タオの口から小さなため息がもれた。

「チャニョルにはこのことは黙ってたおいたほうがいいよ」

「どうして?」

「チャニョルに気があるふりをすれば・・・僕が・・・クリスを見てたことがルハンにばれずにすむと思ったんだ」

クリスはタオの鎖骨をあまがみするのをぴたりとやめ、目を丸くさせてタオを見上げた。
しかしその顔をすぐに崩ずし、ふふっと笑い声をもらすと、タオをベッドに横たえ、再び彼の中に沈みこんだ。

「実の兄をだましたってわけか?」

タオは顔をそむけたが、すぐにクリスにあごをつかまれ唇に噛みつかれた。

「まったく・・・いけない弟だ」

END

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