九生

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敵の刃が貫いたのは、自分たちの仲間ではなく。刃と仲間の身体の間に滑り込んだ、つい先ほどまで自分たちと一緒に共闘していた一匹の黒猫だった。

我々が現場に到着したとき、既にブラッドブリードと刃を交えていたその不思議な猫は、我々が敵と戦闘を開始した際、とても驚いたような顔をしていた。
「あとは我々に任せてほしい」
言葉を投げたところで、種族の違う相手に伝わるかなんてわからない。それでもこれ以上この小さな存在を闘わせるわけにもいかず、巻き込まないためにもそう伝えずにはいられなかった。
他のメンバーが敵に攻撃を仕掛けているごく短い合間、金色に輝く小さな目と見つめ合う。わかってくれたのか、その後黒猫が敵に向かっていくことはなかった。
仲間の一人から端末に“諱名”が送られてきて、敵を密封すべく動き出した時も、黒猫は動かなかった。
敵の“名”を紡ぐ。あとは心臓に十字架を押し当てれば、終わるはずだった。
しかし敵は最後の抵抗をしてみせ、あろうことか非戦闘員である仲間へとその刃を伸ばした。
仲間の誰もが、間に合わなかった。炎も、氷も、雷も、風も、人狼でさえも。まさに敵による全身全霊の攻撃だった。
―――しかし、刃が貫いたのは黒色の、小さな存在。
誰もが驚きに目を見開いている中、その猫の口元がまるでヒトのように、ニイと吊り上がったのが見えた。
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