九生

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現場に駆け付けたとき、メンバーの全員が驚いた。
それはそうだろう。なんせ鏡に映ることのない異形のもの――彼らにとって“敵”である吸血鬼――と対峙していたのは、人間(ヒューマー)でも異界(ビヨンド)の者でもない、一匹の黒猫だったのだから。
吸血鬼は自身の身体を変形させた刃を、黒猫は口に咥えた剣――あれは日本刀だろうか――をそれぞれの武器として、街を壊しながらもこちらに近づいてくる。
「なあんか…色々と気になることはあるけど」
「今、我々がやるべき事に変わりはない」
メンバーの上司とその副官にあたる男の言葉に各々が気合を入れ直し、手にした武器を構え直す。
今現在、自分たちが最優先すべきことは、吸血鬼―――ブラッドブリードの封殺。非戦闘員ではない人狼はその記録を、少年はそれに必要な“名”を読み取るために、首にかけていたゴーグルを目元に装着した。
それを横目に見た男が、ふっと口角をあげる。
「―――さあ、往こう」
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