深い夢の部屋

□俺は、
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兵士2人はどうしても帰らないらしい。
悪質商法の商人の如く、部屋に居座りやがった。
そんな状態で既に3日が経過していた。

その3日間、一度も戻らず辺りをさまよっていた。
ギルに言った怪しいやつらを調べるためでもあるが。
しばらく歩き続けると、泣き声が聞こえてきた。
小さい声だ。
何故か、その声に嫌な予感がしてならない。
どこかで聞いたことがあるような声だった。
小さなすすり泣きを頼りに道を進むと、小屋のような場所にたどり着いた。
中の様子を伺うと、数人と誰かがいるらしい。
ボロボロな扉の隙間から中を伺うと、見覚えのある男女が一人ずつ。
(メリ!?デジレの奴も…!?)
あちこちに傷が見られる。
人さらいにでも見つかったのだろうか。
そこで、堪忍袋の緒が切れた。
扉を蹴り破ってすぐ近くにいた奴らを蹴り飛ばす。

「…オイ、その2人に、何をした」





「大丈夫か」

「は、はい」

その場にいた奴を全員床に沈めるのにそこまで
時間はかからなかった。

「メリ、起きろ」

メリは、いつしか人攫いに殺されかけていた女子だ。
助け出して、あっちに連れて行ったのだが…何故、此処にいる?

「メリ、?」

メリの手に触れた瞬間、悟った。
ヤバイ、このままじゃ死ぬぞ、スゲエ冷てぇ。

「ギル、しっかり掴まれ。全力であっちに戻る」

「え、?メリがどうかしたんですか…?」

「このままじゃ死ぬ。ちんたらしてる場合じゃねぇな」

上の服を脱ぎ、メリにかぶせた。
これで少しは冷えるのが抑えられるといいのだが。

「レイさん、服…」

「気にするんじゃねえ。」

今は上半身に何もまとっていない状態だが、包帯が巻かれていたりとしているので大丈夫だろう。
ギルは気にしているようだったが、俺の一言で気にするのをやめたようだ。
人が少ないルートを選び、地上に出る。
すっかり日が暮れて暗くなった街中を勢いよく駆け抜け、街の隅っこにある家に駆け込んだ。

「レイさん!?」

「ミリヤ、出番だ。メリがヤバイ」

「どうしたんですか!?そんな格好で、メリも」

「いいから、早く見てやってくれ。
お前にしか頼れない。手が空いてる者でデジレも見てやってくれ」

駆け込んだ先は俺らのもう一つの家だ。
あるとき壊滅させたグループが地上に家を持っていたので、それをもらったのだ。
今では地下街に連れ込まれ、殺されかけていた子らを見つけてはここで暮らすように言っている。

中には男や俺よりはるかに年上の者もいたり…他にもいる8人で助け合いながら暮らしている家だ。
俺は滅多にこちらに来ない。
俺がここに来ているととが地下街の奴らに知れ渡ったら、何らかのことに利用されるのは目に見えてる。

此処で唯一医療の知識があるミリヤにメリを託して数時間。
部屋からミリヤが出てきた。

「大丈夫です。命に別状は無いようですが、打撲がひどいです。これ以上やられていたら、死んでいたかもしれません」

「そうか、すまないな、ミリヤ。助かった」

「レイさん、服を着てください。お体が冷えますよ?」

「…ああ」
自分が服を着ていないことを完全に忘れていた。
らしくないな、と内心で自嘲してミリヤに渡された服を着た。

「デジレの方は?」

「部屋に連れて行ったら泣き出してしまって…レイさんの前では泣かないように耐えていたようですよ。よほど怖い思いをしたようです」

「…そうか。」

何があったのかはわからないが、あのグループには灸を据えておかないとな。
どういう意図だったのか知らないが、
明日にでもまた探ってみることにしよう。
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