深い夢の部屋
□出会い、勧誘
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エルヴィン視点
最近王都を騒がせているゴロツキがいると聞き、リヴァイの時と同じようにスカウトに来た。
道行く人にその人物について訪ねるが、噂に尾ひれがついてどれが本物か分からずにいた。
ある人はその人物を女といい、ある人はその人物を男といい、見かけたやつを片っ端から襲っていく凶暴な奴と言う人もいた。
名前だけが知れ渡っていて、どんな人物かはあまり知られていないらしい。
探すのが大変そうだな、と呟くと隣からさっさと探すぞ、と返ってきた。
どうやって連れて行くかというのも問題だった。
すんなりと兵団に入ってくれるとは考えにくい。
どう説得するかも考えなくては。
「リヴァイ、どう兵団に引き込んだらいいと思う?」
「気絶させて連れてきゃいいだろうが」
「簡単に気絶させられる相手ではなさそうだが、それも一つの手段かもしれんな」
地下街を歩き回ること一時間。
薄暗い路地で、人が集まっているのを見つけた。
どうやら、集団で人を襲っているらしい。
「すごい騒ぎだな」
「放っておけ。よくあることだ」
私よりこの場所に詳しいリヴァイの言うとおり、関わらないように通り過ぎようとした刹那、こちらに集団の一人が飛んできた。
「お前ら、うるせぇんだよ…菓子に群がる蟻か」
ドスの効いた声が耳に届くと同時に、数人がうずくまったり飛ばされたりした。
その張本人は黒いフードを深くかぶっていたため、顔は確認できなかったが、かなりの手練と考えられた。
しかも、よくよく見てみると手が縛られている様子。
それでも長い足を使って周りにいるやつを蹴散らして居る。
思わず感嘆の声が漏れ、もしかしたらあの子が今回の目的の子かもしれない、なんて考えていると、群がっていた全員を地に伏せた子が倒した奴を一瞥して立ち去ろうとしていた。
「すごいね、君」
私は呼び止めるために声をかけていた。