With you

□使命は
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「以上5名は自分の使命を全うし…壮絶な戦死を遂げました…」


一瞬その場にいた人達の時の流れが止まったように、固まった。


「そんな…」


サシャは驚愕の事実のあまりに現実かどうか把握できていない様子だ。


「34班はほぼ全滅か…

オレ達もまともに巨人とぶつかればそうなる…」


周囲の訓練兵達も口々に呟きはじめた。



「ごめんミカサ、マリア……エレンは僕の身代わりに…僕は…何も……できなかった。

すまない……」


アルミンは大粒の涙をこぼし続けながら後衛であった私達に謝った。




“そんなことないよ”、そう言ってあげたい。


けど、現実を受け入れることができなさすぎて…言葉が出てこない……

周りの訓練兵のざわめきさえも耳に入ってこない。




「アルミン」


ミカサはアルミンに手を差し伸べた。



どうして手を差し伸べてくれたかが分からず、ただただミカサを見つめるアルミン。



「落ち着いて。



今は感傷的になってる場合じゃない。」



その言葉は、はっきりと私の耳に入ってきた。



「さぁ立って!」


壁にもたれかかり座り込んでいたアルミンを立ち上がらせる。



少し風が出てきた。


「マルコ



本部に群がる巨人を排除すればガスの補給ができて、みんなは壁を登れる。


違わない?」



ミカサは刃で本部の方角を指した。


「あ…あぁ、そうだ…


し、しかし…いくらお前とマリアがいても…あれだけの数は…」

「できる」



否定的なマルコの意見を聞かず、できると断言した。


そして傍にいた私の腕をブレードを持つ手の反対側の手で掴み、刃を空に掲げた。



「私達は…強い…あなた達より強い…すごく強い!


…ので私達は…あそこの巨人共を蹴散らせることができる…例えば…二人でも」


え、ちょっと待ってミカサ…

私そんなことできない…


心の声は言葉にはならなかった。否、できなかった。

「あなた達は…腕が立たないばかりか…臆病で腰抜けだ…

とても…残念だ

ここで…指をくわえたりしてればいい…くわえて見てろ」



「ちょっとミカサ?いきなり何を言い出すの!?」

「あの数の巨人を二人で相手する気か?そんなことできるわけが…」

他の訓練兵達はミカサを止めようとしている。


「できなければ……死ぬだけ。

でも…勝てば生きる…

戦わなければ勝てない」


ミカサの凛とした横顔とミカサの言葉で思い出した。


私のしなくちゃいけない自分の使命を。




―…そうだ



私は勝たなきゃいけない。


お母さんの仇をとるためにも、エレンの分も…戦わなきゃ



「マリア」

ミカサは私の名を呼ぶと同時に本部の方角に向かって屋根を飛び越えていった。


私もそれに続く。


「オ、オイ!?」

私達を呼び止める声が聞こえたが、私達は止まってはいけない、進まなきゃ。



弱い自分を捨てなくちゃ。


後ろ向きな自分を捨てなくちゃ。


自分に自信を持たなくちゃ。




「オイ!オレ達は仲間に二人で戦わせろと学んだか!?

お前ら!本当に腰抜けになっちまうぞ!」


遠くから微かにジャンの声が聞こえた。



私達は、戦うためにここにいるんだ。
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