きみがいた日

□きみは
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壁外調査に出ればこの二人に敵う兵士なんていなかった。


人類最強と次期団長候補の妹…
互いを信頼しあい、背中を預けられる…絵に描いたようなコンビだった。
神通力、というのがふさわしいのだろうか。

喧嘩をしたまま壁外調査に出ても、巨人の群れに遭遇すれば言葉なしに背中を相手に任せていた。


調査兵団の誰もがうらやむ、そんな二人だった。




しかし、悪夢は残酷なほど唐突に襲いかかってきた。


ユリアが調査兵団に入団して三年目のある壁外調査のときだった。

巨人の群れではなかったので、個々に討伐していた。
リヴァイ、ユリア共に3体の巨人を相手にしていた。

先に討伐し終えたユリアがリヴァイの方を振り向いた。

『!!』

ユリアの表情が変わる。

『兵長!!』
ユリアがリヴァイを呼ぶが、リヴァイは気づいていない。

リヴァイから数mの距離に…動きの遅い奇行種。
周りの兵士を無視し、リヴァイに腕を伸ばした。
巨人を討伐しきった瞬間、リヴァイはようやく奇行種の存在に気付く、が遅かった。


『兵長!!!』

ユリアが立体機動を駆使し、奇行種の腕を削ごうとした。しかし
ガシッ、バチンっ!!
奇行種がユリアを握り、叩き落とした。

ユリアは木の幹に頭から激突する。

「ユリア……!!!」
奇行種がユリアの方に目をやった一瞬でリヴァイは、奇行種から離れ、ユリアの方へ飛んだ。

奇行種はそちらへ目をやった。

その瞬間、撤退命令が出た。
「撤退だ!」
リヴァイは意識が朦朧としているユリアを担ぎ上げ、馬に跨がった。




暫く馬を走らせたところで意識がはっきりしてきたユリアはもう大丈夫ですと言いながら自分の馬に跨がった。

「ユリア…すまない」
ユリアの横に馬を走らせていたリヴァイはぽつりと呟いた。
『大丈夫です!私は……』
ユリアの言葉の続きが聞こえない。
ユリアの前に馬を走らせていた私は不思議に思い、振り向いたと同時に馬の上からユリアの姿は消えた。

「ユリア!!!」

リヴァイは馬を止め、地に足をつけた。

ユリアはぴくりとも動かない。
「ユリア!ユリア!」

リヴァイはユリアを抱き起こし、ゆする。

『へい…ちょ…』
微かにユリアが声を出す。今にも消えてしまいそうなか細い声。

私も馬から飛び降り、ユリアの元へ向かう。

「ユリア!しっかりしろ!」

リヴァイは普段からは想像がつかないくらい取り乱していた。

『………どう…して……
から…だ…に…ちから…が……はいら…な……』
弱々しい声、聞くだけでも辛い。

「ユリア!」

私もユリアの名前を呼んだ。

「おそらく原因は木の幹に激突した事か、巨人に握られた事だ…!脳に損傷かもしくは内臓に損傷がが…」

私は医療班を呼ぶため再び馬に跨がり、馬を走らせた。


―…どうか間に合ってくれ…

私にはそう祈る事しかできなかった。
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