きみがいた日

□想いは
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「開門、30秒前!」


開門までの時を刻む声が聞こえる。



「ユリア、緊張してない?」


私は、横で馬に跨がってるユリアに問いかけた。



『いえ、大丈夫です』

そう言って微笑んだ。


初めての壁外調査とは思えないくらい落ち着いている。


そこらにいる何度目かの壁外調査の調査兵団よりもはるかに、気持ちが据わっている。

頼もしいね。




「あーもうじれったい!はやく開門しないかなぁ?!」



私は久々の壁外調査ということもあり、うずうずしていた。勿論、巨人に会えるから。



「再度言っておく。巨人捕獲作戦なんて実行するんじゃねぇぞ」


ユリアと逆サイドにいたリヴァイが私をじっと睨んできた。



「ちぇーッ、分かってるよー」


私はしぶしぶ返事をした。




「開門始め!第32回壁外調査を開始する!前進せよ!!」



門が開いたと同時に馬の蹄の音が一面に響く。





「ひゃっほーう!!」



私は走り出すなり馬を最高速度で走らせた。


巨人に会いたい、というのもあったが、リヴァイとユリアの間を邪魔しちゃ悪いなという気持ちもあった。



『ちょっ…ハンジさんっ…』

「ハァ…放っておけ」


リヴァイはため息混じりだがいつもと変わらない口調で言った。


『でも…』


「構わねぇ、あいつはいつでもあぁだ、気が向いたらすぐ戻ってくる」



『そうですか…』




ユリアの少し心配そうな顔が遠目に見えた。



すると




「西側前方から15m級1体と7m級2体!」



そう叫ぶ声が聞こえた。私はそちらへ馬を走らせ、巨人の目の前に来た。


「やぁ!こんにちは!元気?」


私に気づいた15m級が、こちらに向かって走ってきた。


そしてほどよい距離になると私に手を伸ばしてきた。が、避ける。



「いやぁー鬼ごっこかい?私は捕まらないよ〜」



私は巨人に顔を向けたまま馬に跨がっていた。





前を向いたその時だった。




目の前に大木があった。かろうじて避けるが、バランスを崩してしまった。




巨人の手が再び私にのばされる。






―…まずい…





もうダメかと思った、しかし






ザシュッ、



といううなじを削ぐ刃の音が聞こえ、同時に巨人はうめき声を上げながら倒れた。



倒れた巨人の後ろにはユリアの姿がある。



『大丈夫ですか?ハンジさん!』



どうやら私のことが気になってあとをつけてきたみたいだ。




「大丈夫、かすり傷一つしてないよ」


私がハハハと笑うと、ユリアは馬を呼び、再び跨がった。



『もぅ…気をつけてくださいよ…?』


「あぁ、大丈夫さ」



私達は皆のいる元へ向かった。






「東側から巨人多数!近付き次第立体機動に移ってください!」


再び巨人接近の合図が聞こえる。


私達の配置は知らされた場所から近い。巨人の足音が近づいてくる。



まず先陣を切ったのはユリアだ。


軽快な立体機動で巨人のうなじを次々と削いでいく。



本当に初めての壁外調査かと疑うくらいだった。



私達も巨人を削いでいく。



自分の回りにいた巨人を討伐し終え、ふとユリアの方を見ると、巨人がユリアの回りに群がっていた。


四方を巨人に囲まれているため、思うように立体機動ができていない。


討伐補佐をしないといけないと思い、立体機動に移ろうとしたときだった。




一つの影が巨人を削いだ。





「何てこずってんだ、ユリア」



『兵長…っ!』



ユリアの援護に来たのはリヴァイだった。



「さっさと殺れ」


リヴァイは息一つ切らさずに言った。



『はい!!』





二人はなんとも言えないスピードで巨人を片付けてしまった。





今回の壁外調査では収獲は無に等しかった。

ただ、例にないくらい死傷者が少なかった。




そして、ユリアとリヴァイのペアの巨人討伐はなかなかの見物であった。




これからが楽しみだ。
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