きみがいた日
□再会
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―8年前
『やっと…やっとここまできた…』
訓練兵団を主席で卒業した少女は調査兵団の勧誘演説を集団の一番後ろで聞いていた。
まるで誰かに気付かれないように、ひっそりと。
「他の兵団の志願者は解散したまえ」
演説でそう言ったのを皮切りにぞろぞろと大勢の訓練兵達は散らばっていく。
回りには両手の指で数える程の人数しかいない。
「では今!ここにいる者を新たな調査兵団として迎え入れる!心臓を捧げよ!」
ハッ!
初々しい新人兵達の敬礼を目の前に私達は当時の…エルヴィンの一代前の12代団長の傍らに立っていた。
だが、横にいたエルヴィンの表情が明らかにおかしかった。
「…ユリア!」
一人を見つめ、名前を呟いた。
そう、訓練兵団を主席で卒業した彼女はエルヴィンの妹、ユリア・スミスだったんだ。
* * *
調査兵団を志願した新人兵達が解散すると同時にエルヴィンはユリアの元に駆け寄った。
「ユリア…お前…」
『久しぶりね、兄さん』
そう言って静かに微笑んだ。
綺麗な金色の髪に少し太い眉、ぱっちりとした二重に綺麗な碧眼。
少し長い髪を綺麗にゆるく巻き、サイドで束ねている。
美人という言葉がまさにぴったりな容姿だった。
「兄さん?え、まさかこの子がエルヴィンがずっと話してた妹なの!?」
何も知らない私はあまりの驚きに思うように言葉が出てこなかった。
「なんだ、騒がしい…」
そう言いながら背後からやってきたのはリヴァイだ。
『あなたがハンジ・ゾエ分隊長さんに、あなたが人類最強と言われているリヴァイ兵士長ですね?
はじめまして、兄がいつもお世話になっております。私ユリア・スミスと申します』
そう言って礼儀正しくペコッと頭を下げた。
「え?!私の名前、知ってるの!?」
私が勝手に盛り上がっているのをよそに
「エルヴィン…お前の妹か?」
リヴァイは腕組みをしてエルヴィンに質問を投げかけた。
「あぁ…私の妹だ…
まさか、訓練兵を受けていて…さらには調査兵団に志願するとは…」
『兄さん…世界は残酷なの。誰かが命を捧げないと、この世界は何一つ変わらない』
真剣な眼差しでそう言った。
年はまだ若い。だが、思考や言動はそれに合わず、ずっと大人びていた。
『本日より、調査兵団の一員になります。皆様、よろしくお願いします』
そう言ってユリアはまた微笑んだ。
その微笑んだ顔はまるで殺風景な世界に一輪の綺麗な花が咲いたようだった。