short (進撃の巨人)
□金木犀
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―845年
『・・・こいつ寝てるよね?』
「寝てる」
私は幼なじみのエレン、ミカサの2人と薪を集めに来ていた。
もう日が西に傾いているのに、エレンは木にもたれかかり熟睡していた。
「・・・エレン。エレン!」
ミカサがエレンを起こしてみる。
「ん・・・?」
「起きて。もう帰らないと日が暮れる」
「・・・?・・・あれ?
ミカサ・・・お前・・・髪が伸びてないか・・・?」
こいつ、どんだけ熟睡してたんだろう。そう思っていたら
「・・・
そんなに寝ぼけるまで熟睡してたの?」
ミカサが私と同じことを思っていたのだろう、エレンにそう言った。
「イヤッ・・・なんかすっげー長い夢を見ていた気がするんだけど・・・なんだったけ、思い出せねぇな・・・」
ふと、エレンの顔を見ると、目には涙。
「エレン?
どうして泣いているの?」
ミカサの突然の言葉にエレンは戸惑っていた。
「え・・・?え・・・!?」
『何?いじめられる夢でも見たの?』
私は冷やかしを少し込め、エレンを肘でつついた。
「ばっ・・・ちげーよ!たぶん・・・」
エレンは目に溜めていた涙を拭い、私に反論した。
『ふぅーん・・・ま、いいや。
とりあえず、日が暮れる前に帰ろ?』
そう言って私は木にもたれかかっていたエレンに手を差しのべた。
「・・・帰ろうか。」
エレンは私の手をとり、立ち上がった。
私3人で歩く帰り道、ある木からとてもいい香りがした。
見上げると、その木にはオレンジ色の小さな花が無数に咲いていた。
『・・・わぁっ、すごいいい匂い・・・これ、なんて花だろう?』
気を見上げたまま、私は呟いた。
「・・・金木犀だ」
エレンは、ふと呟いた。
「エレン、どうして知っているの?」
ミカサは不思議に思ったのか、エレンに問いかけた。
「・・・あぁ、アルミンに教えてもらったんだ。
木にたくさんのオレンジ色の小さな花が咲いて、すっげーいい香りがするって言ってた。
きっと、これだ・・・金木犀」
金木犀を見上げたエレンは笑っているように見えた。
その顔は、不思議と脳裏に焼きついた。