Chocolate dream

□第11章
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倉永と別れて俺は屋上と校舎が繋がる階段の踊り場で、

自分の手が衝撃で切れるほど、壁を強く殴った。

制御出来ない己の感情。

それが怒りとなって更に自分をコントロール出来なくなる。

俺は倉永に何てことを・・・。

彼女に初めて触れた唇に手を添えれば、後悔の念しか滲み出ていなかった。

ただ、自分を頼れと言いたかっただけなのに。

屋上の扉を開けたとたん、目に飛び込んできたのは、

彼女がフェンスに登ろうとしている所で。

一気に心臓が冷えるのを感じた。



自分で何とかするのならば、俺はなにもせず見守っていようと思っていたのに。

気付けば彼女を追い込んでいた。

フルフルと震える彼女に無理矢理に口付けしたのは、

彼女を自分の物にしたいと思ったから。

俺がいることを思い出させて、身体に刻み込みたかったから。

全ては俺様のエゴ。

己の欲望で、弱っている彼女をより傷付けたに間違いなかった。

なんて最悪な男なのだろう、俺は。





彼女がいない1週間あまりは、俺にとってとても退屈でつまらない毎日だった。

彼女の笑顔がすぐ見れない事に怒りさえ感じる日々。

その彼女はいじめと戦い続けていた。

俺はそんな彼女を助けたくて、必死に手を伸ばすのに、

彼女は悲しそうな顔で見つめるだけ。

そんな彼女の態度にすら怒りを覚えた。

時にプライドが高過ぎなのは厄介だ、と感じる。

早くこの手を掴めよ。

俺がこんなにもお前を助けたいと思っているのに。

どうして、お前から手を伸ばしてくれないんだ。

お前は手を繋ぐのが好きだろう?知ってんだぜ。

だから、

早く。

見守ると決めていても、諦め切れずに差し出し続ける愚かな俺の手を、

お願いだから掴んでくれ。

俺をこのまま独りにしないでくれ。

俺は、お前がいてくれてたおかげで孤独じゃなかった。




お前と一緒にいると、いつも胸弾んでいた。

色んな視点で物事を見るお前は、俺にとってとても新鮮だ。

お前の笑顔が見たい。

お前の声が聞きたい。

お前と、一緒にいたい。

常にお前と一緒にいた俺は、独りになった途端、つまらない男へと豹変する。

世界が色褪せる。廃れる。

お前がいないだけで俺は己がこんなにも弱いことを知った。

ごめんな、約束を破って。

お前は俺に近づくなと言ったのに、俺は簡単に約束を破った。

でも1週間なんて時間は俺様の中で我慢した方なんだぜ?

邪魔して、悪かった。

お前を余計傷つけてすまなかった。

早く決着をつけて俺様の元へと戻ってこい。











決して忍足のとこなんて行くんじゃねえぞ。

それだけは、絶対許ないから。







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