Chocolate dream

□第4章
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「聖!おはよっ、昨日はどうだった!?」




学校の教室に到着したばかりの私に、

親友の内田リナがはち切れんばかりの勢いで私の元へ飛び付いてくる。

そんな彼女に圧倒されながらも、しっかりと私は彼女を抱き止めた。

やんわりと香る彼女の匂いに、少しの懐かしさを覚えながら

口元に孤を描く。

と言っても、リナに会ってなかったのは1日2日だけど

昨日のみんなと遊園地へ行って濃厚な時間を過ごしたから、そう思っただけ。





「おはよう、とっても楽しかったよ!!」

「へえ!聖がそこまで言うのは珍しいーっ!」





彼女は驚いたように笑って見せると、次々と私に質問を重ねる。

ニコニコと笑いながら、饒舌に流れる彼女の言葉。

私の返答に一喜一憂し一緒に笑い合う。

彼女とは中学1年生の時からの友達。

一番大切な友達。

昨日の遊園地にも彼女を誘ったけど、

予定が上手く合わなくて、結局一緒に行けなかった。

だから、私はあった出来事を詳しく、丁寧に話して、

彼女と、思い出を共有し合う。

リナは楽しそうに頷き、あ、と口をポカンと開けると

すぐさま私に笑顔で聞いてきた。





「で?跡部君とは少しは進んだの??」




リナがそう口を開けば、クラスの女の子たちが一斉に私たちを見る。

私は思わず息を飲み、辺りを見渡してしまった。

みんな・・・、どうしたの?

私がそんな光景にただただ動揺していると、リナがため息混じりに呟いた。




「はーぁ、みんなして盗み聞き?必死だねぇ・・・」



リナがぶっきらぼうに、そしてワザと辺りに聞こえるように言う。

そんな事を言われた女の子たちは、キッと彼女を鋭く睨んだ。

けど等の本人はそんなことは全く気にしていない様子で、

ポケランと私に首をかしげた。

でも流石リナ!

言いたいことが言えるって凄いよなぁ。

私はこの子のそういうところが大好き。

ウジウジしてる私とは対象的に、言いたいことを何でも言えちゃう。

一言余計なのがたまに傷だけどね。





「でも盗み聞きって?」

「みんな聖にジェラシーなのよ」

「はあ?どういうこと?」

「とにかく!聖には私がついてるから、安心なさい!」




そういって、ニカッと笑いながら無い胸にドーンと拳を叩く。

それをとても心強く思いながら私は“ありがとう”と微笑んだ。

そしてそのまま二人で話していれば、朝の部活が終わったのか、

跡部君と忍足君が教室に入ってきた。

それだけのことで女の子たちはざわめき、即座に二人、主に跡部君を取り囲む。

クラスの男子もやれやれといった感じで、この雰囲気を受け入れていた。

私の隣でリナが“忍足君に近づくな〜”と念を送っていたが、

残念ながら届かなかったようで、私にテヘッとウィンクをする。

それにしても跡部君、すごく不機嫌そうに眉を寄せてる・・・。

彼はドカリと自分の席へ座り、腕を組、とある一点を見つめていた。

そんな彼のまわりにはお喋りの止まらない女の子たちが

彼を楽しませようと必死に取り巻いている。

だけど彼は終始無言。

忍足君も呆れた薄ら笑いで、そんな跡部君を眺めていた。





「聖、あんたもアピールアピール!」

「へ・・・っわ!!」




不意にまたもや彼女に背中を押されて彼の席へと突っ込んでしまった。

だけど今回は転けて頭を打たず、頑張って足で踏むとどまった。

一瞬にして女の子たちの冷たい視線が集まる。

だけど、跡部君の手前・・・。

何か言わなきゃ!

そう思って顔を上げ、彼を見ると

彼の口元は少し揺るまっていて、眉間のシワも無くなったように見えた。

そして私はそのまま勇気を振り絞って、声を彼に向けて届ける。



「お、おはよっ跡部君」

「あぁ、おはよう」




彼が私の挨拶に対して、ぶっきらぼうながらも、

私に応答した彼を信じられない、と言いたげな女の子たちの視線が泳いだ。

彼はそのまま“今回は転けなかったんだな”と軽く笑いながら悪態を突く。

私もそれに答えると、女の子たちは居心地が悪そうに散っていく。

そんな中、私は昨日、彼が言った一言を思い出した。

“他の女と格が違う”

あの時、思ったのがこういう対応の差なんだと思ったけど、

やっぱり、どうして私がこれほどまでに優遇されているのかが分からなかった。

リナが私の耳元で“やるじゃん”と呟いたが、思わず首をかしげてしまった。

なにがやるじゃん・・・なのかな?

対応は前とあまり変わらないと思うけど。

そんな私たちの傍らで、女の子たちがヒソヒソと話、一斉に携帯でメールを打ち始めた。

うわ・・・、なんかもうファンクラブってものじゃないよ。

宗教団体?



HR開始のチャイムが鳴り響くと、先生が教室に入ってき、

みんなは慌てて携帯をしまい、席についた。

するとヴーッ、ヴーッと私の制服のポケットの中で

携帯のバイブレーションが鳴り響く。

突然の振動に驚いて、私は身体を跳ねさせた。

こ、こんな時間に?

誰だろ・・・。

先生にバレないようにコッソリと取り出し、確認する。




『昼休みに体育倉庫へ』





登録していないメアドから、ただそれだけの簡潔な文が綴られているだけだった。

誰、かな。

知らないメアドだけど、行った方がいいのかな。

・・・行こう。

なにか大事な用かもしれないし。

私はそっと携帯をしまうと、ちょうどHRが終わる。

終了のチャイムもそこそこに、私は跡部君の席へ飛んでいく。




「ごめん、お昼に用事ができたから先に食べてて?」

「ほう、どんな用件だ?」




彼の問いにどう答えようか迷い、

私は結局、“ちょっとね”と愛想笑いで済ませてしまった。

他にどう説明、と言うかどう言っていいのかよく分からない、というのが本音だけど。

別に彼に説明するような内容でも無いし、

と自分の中で勝手に決めつけた。

すると彼は考え込むように顔に手をかざし、

蒼い瞳で私のことをジッと見た。

っ・・・!

瞬間的に自分の全てをさらけだした感覚に陥る。

そんな後ろめたい事はないはずなのに。

思わず顔を背けた私に、彼は腕を組み、うつ向きながらハッキリと私に言う。




「あまり俺から離れるんじゃねえ。いいな」




自由、だけども拘束するような印象を受ける彼の物言いに

私は少しの不安を胸に秘めながら頷いた。





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