Chocolate dream

□第2章
1ページ/3ページ
















昼のチャイムが鳴る。

今は4時間目が終わったところ。

鳴りそうなお腹を押さえつつ、自分で作った弁当を持って廊下へと出る。

中学3年生にもなるのに学園の中で唯一行かなかった、

いや、行けなかった場所へ向かう。

氷帝学園内の脇にある綺麗な噴水。



「あ、お嬢ちゃん。こっちや、こっちー」

「フン、遅いぞ」



そう、その噴水はいつもあのテニス部員たちが占領していた。

今までの私なら恐れ多くて近寄れなかったけど、彼らの友達となった今じゃあもう分が違う。

氷帝学園には跡部君が寄付してくれた高級フレンチレストランほどの大きな食堂がある。

だけど、跡部君がそこに行くと女の子達が騒がしいからという理由で、

いつも噴水で弁当持参で食べてるらしかった。



「ご、ごめんなさい。でもホントにいいの?」

「誘ったのはこっちや。やっぱりダメです、みたいなことは言わへんで。なぁ、跡部」

「・・・あぁ」



本当に今日はありえないことがたくさん起こっている。

いや、起こっているのだからありえなくはないか。

今日の持久走がおわった後に跡部君たちから誘われたのだ。

“走るの頑張ってたからな。一緒に飯食べてやってもいいぜ”

“おいおい跡部・・・そんな言い方無いやろ。ま、昼休みに噴水で待っとるわ”

誘われたときはびっくりしたけど。

リナは放送委員だから一緒にお昼を食べれないし・・・

新学期となった今は恥ずかしい話、一人でご飯を食べていた。



「おい。何ぼーっとしてるんだ。早く来い」



跡部君にせかされて我に返る。

あ・・・早く行かなきゃ。・・・っと!?

足元にあった小さな石につまずき、大きく身体が宙に浮かぶ。

そして持ってたお弁当も宙に舞う。

あぁ!お弁当が!!



「危ないよっと!!ジャーンプ!」



誰かに身体を引き寄せられる。

同時にお弁当も誰かの手になかに・・・。

私は背中から感じる小さな温もりに身を任せていた。



「へっ!?」



振り向くと可愛い顔をした赤髪の男の子が私を支えてくれていて。

す、すごい。私を支えるだけじゃなくてお弁当まで・・・!



「危ない危ないっと。お弁当も無事だぜ」

「あ・・・ありがとうございます」



彼からお弁当を受け取り、しどろもどろなお礼で返事をし返す。

この子どこかで見たことあるなぁ・・・。

この時間にここに来たってことはテニス部の子かも。

そんな彼に忍足君が軽く拍手をした。

跡部君は顔をしかめながら。



「ナイスやで岳人」

「てめーも遅いぞ」



やっぱりテニス部の子か・・・。

そんな彼は可愛い笑顔を振り撒きながら、忍足君に手を合わせる。



「わりぃわりぃ、侑士、跡部! 先生に呼び出されててさぁ」


「お前はなんべん呼び出されば気が済むんや・・・」




この二人も仲良さそうでいいなぁ。

あ・・・確かこの人って忍足君のダブルスのペアの子だったっけ・・・?

前に確かリナに聞かされたと思ったけど。

うーん、うーんと悩んでいると、彼のクリクリとした視線が私の方へと向いた。



「ところで侑士!この女の子は誰?」



あっ・・・えっと・・・自己紹介したほうがいいのかな・・・。

私改めて彼の方を向き直り、コホンと一つ咳払いをした。



「は・・・初めまして。倉永 聖です。あっ3−Aです」

「倉永 聖・・・?どっかで聞いたことあるぞ?」



彼の言葉に私の心臓がドキリと口ずさむ。

それは心当たりがあるのではなく、単なる驚きで。

私、有名人とかじゃないんだけどね。

噂とか?・・・だったら嫌だな。



「・・・あっ!思い出した。けど言わないっ!」



意地悪そうな顔をしてその人は言う。

その顔にまた少しドキっとした。そして冷や汗が出る。

どうしよう、なにか変なことだったら・・・。

でも私は身に覚えがないし・・・。



「俺は向日 岳人ってんだ!よろしくな!!」



その向日君の笑顔を見た瞬間に私の不安は一気に吹き飛んだ。



すごく明るい子だな・・・


よし。負けずに私もいい感じに挨拶しとこう。




「よろしくねっ!」

「おぅ!いい返事だぜ。・・・なぁなぁ倉永ってジャンプ好きか?」


「ジャ・・・ジャンプ?うーん・・・ジャンプかどうかわからないけど高飛びはできるよ。」



実際私は去年の体育大会で高飛びの部に出て見事1位を獲ったことがある。


記録は確か・・・うーん・・・忘れちゃったや・・・。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ