Chocolate dream

□第1章
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いつもの学校へ行く。

そう。氷帝学園。

綺麗で華やかで、通っている人たちも気品がいいんだろうな、と私は思う。

きっと自分は違うけれど。

新学期が始まってしばらく経つ。

もう桜の花びらもほとんど無くなり、緑色の葉がこれでもかというほど目立つようになってきた。



そんな氷帝学園では、特に男子テニス部が有名。

跡部景吾君。その人が約200人の部員をまとめている部長。

ちなみに生徒会長もしていて、人望も厚いよう。

そんな跡部という人には膨大な女子がファンクラブを経営?している。

そして学園の女の子ほとんどがファンクラブに入っていて、

私も誘われたりはするが、いい噂を聞かないので入らないことにしている。

やはり女の子が多い様で色々と揉め事があるみたいで。






校門をくぐり、私は靴箱で靴を履き替え、3−Aの自分の教室へと向かう。

ガラガラと教室の扉を開ければ、賑やかな皆の声が私を迎えた。



「おはよーう」

「おはようっ!聖っ!」



元気よく返事をしてくれたのは親友のリナ。

可愛くて、気さくで。よく相談に乗ってもらってる。

彼女はショートの髪をクシャリと手で乱して、私に駆け寄る。



「ほらほら!今日も麗しいよーー!!」



彼女の目線の先には噂の跡部君が偉そうな態度でイスに座っていた。

女の子に囲まれていてもムスリとした顔を壊さない跡部君はつまらなさそうに見えて、

彼女の言う“麗しさ”は感じられなくて、私は思わず顔を顰める。



「えぇ?そうかな」



なんで、あの人は机に足を乗っけているんだろう。机、汚くなっちゃうよ。

そんな私の思いもよそに彼女は嬉しそうにピョコンと弾む。



「ねー、聖。今日こそは跡部様に声かけてきなよ!」

「・・・嫌だよ」

「もぅ。どうして聖は声かけないのよー」



だって興味無いんだもん。怖いし。

あ、今こっち見た・・・。うぅ・・・怖いなぁ

跡部君がきゃあきゃあと叫んでいるリナの方向へと目をやり、ついでにといった様子で私を見る。

その時フと笑ったのは気のせいだろうか。



「ほら、行ってこーい!」



その声と同時に私は背中を押されてしまう。

不意打ちで私がバランスを崩せば、前のめりになってしまう。



「・・・!?うっ・・・わわわっ!!」



ゴンッ!!

鈍い音が教室中に響き渡った。そして皆静まり返る。

そしてクスクスと沸騰する。

恥ずかしくて、恥ずかしくて、顔がポンと熱くなった。

ジンジンと痛む私のおでこは少し腫れちゃって、リナを睨みつけた。



「もーっ!リナってば、急に押さないでよ!!」

「おい」

「へっ?」



顔を上げると、いかにも機嫌が悪そうな顔をしている跡部君が立っていた。

跡部君の足はタムタムと小刻みに貧乏ゆすりをして。

だけど彼の顔は少し楽しそうだった。

その証拠か何となく口角が上がっていた。



「ふぇぇぇぇ!?っあ、ご・・・ごめんなさい!!!!」



私は全力で跡部君に謝る。なんだか怒られそうで怖かったから。

彼にはなんだか怖いイメージがつきまとっている。私の中では。

後ろを見ると私を押した当の本人は腹を抱えて声を押し殺して笑っていた。



「うぅ、リナの奴め・・・」



跡部君にさらに謝ろうとクルッと前を向くと、

なんと跡部君も腹を抱えて笑っていた。

へ?あぅ、どして??



「ッククク!はーっはっはっは!!」

「えっと・・・あの」

「お前・・・!ふぇぇぇってなんだ。ふぇぇぇって!!ククククッ」



どうやら私の悲鳴?で笑ってたらしい。

そんな大笑いするほどの声を上げた覚えはないけど。

だけど、いつもクールな跡部君がこんなに大声で笑っているのを見て、少し嬉しくなる。



「えっとあの、ビックリしちゃって」

「っはー。そんな悲鳴の奴、初めて聞いたぞ」



跡部君が落ち着きを取り戻してそう言った。

目尻には少し涙が溜まっている。

はあ、そんなに笑わなくてもいいのに。

反論しようと私は咄嗟に口を開いた。



「あのっ・・・!」



私が講義をしようと口を開くとそれよりも先に綺麗な低音の声が聞こえた。

それは流れるように私の耳の鼓膜を震わす。










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