僕はオトコに生まれたかった。
□拍手LOG。
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分かてぬシルシ。
「もう、俺やだよ」
弱々しく呟かれた声に、僕の心は凍り付いた。
とうとう君まで、僕を厭うのか。そう詰りそうになる心を、拳を握ることで抑え込む。
「なんで、なんで俺たち、<俺>と<お前>なんだよ」
意味の解らない言葉を吐き、今にも泣きそうな顔でこちらを見つめる君。
「なんで俺たち、一つじゃないんだ」
ああ、
ああ、
この気持ちを、どう伝えよう。
どんな言葉を尽くしても、君には伝わらない気がする。
こんなにも、想われていること。
それを確信できていること。
それにどれほど救われているのか、一生をかけても伝えきれないだろう。
一つじゃなかったから、僕は孤独を知った。
一つじゃなかったから、僕は愛を識った。
一つじゃなかったから、僕は幸せを至った。
賜ってばかりの僕には君に教えられるものがないけれど、<与えられないモノ>があるから安心して言える。
「僕は君と一つじゃなくてよかったよ」
そうして穏やかな笑みを浮かべれば、君は目を丸くしたあと口角を緩めた。
きっと君は思いもしない。
与えてばかりの君は考えもしない。
――このキズを分かつなんて、冗談じゃない。
幸せの象徴を己の汚れで穢すことがどれほど辛く苦しいのかなんて、君には決して分からないし分かってほしいとも思わない。
そんなの、僕にはとても耐えられない。
――ああ、一つじゃなくてよかった。
心の中で安堵の溜息を吐いてから、口にしたのは別の本心。
「しあわせだからね」
そうして僕は今日もまた、君の笑顔に安堵する。
〜幕〜
過去ログ。