僕はオトコに生まれたかった。
□拍手LOG。
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愛しているとか好きだとか。
Side-A-
ただ視線が絡み合っただけだった。
どうして、
どうして、
いつもは、
なんで、
動揺を悟られまいと、冷め切った紅茶の入ったカップに唇をつける。
ともすれば泣き出しそうな心を、ひたすらに宥めた。カップで隠した視線を恐れて、時間をかけて残り数滴ほどしか入っていなかった紅茶を飲む真似をする。
ここで間違えれば、終わりが、始まる。
どうか逃がしてくれ、と瞼の裏で懇願しながら、ようやくカップをソーサーに戻し、そろそろと視線を上げた。
ふ、と駆け抜けたのは安堵だろうか、失望だろうか。
相手の視線はすでに手元の書物へと向けられていて、すぐに<逃がしてくれたのだ>と悟った。
ごめん、と口にしたくなる自分の浅ましさに、吐き気がする。
「おかわりは?」
掠れた声が出た。
「俺のはまだ入ってる」
返るそれには、少しの揺らぎも視えなかった。
*End*
Side-R-
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