僕はオトコに生まれたかった。

□拍手LOG。
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君への嘘
※同タイトル曲をイメージソングにして書きました。




 ただがむしゃらに生きていた。

 用意された選べない結末に、残されたものなどないことを知りながらも、気づかないふりをしたままで。

 二人の夢を見た日には、悪夢を見たように動悸と汗が止まらない。幸せな日々だったはずなのに、今となっては幻だったのではないかと。

 揺らぎ、揺らぐ、揺らいだままの、彼の残像が、目覚めたってまた揺らいで。

 泣いているのだと気が付いた。

 確かに自分の目から零れ落ちる滴は、まるで他人のもののように温かい。もしかしたら、この涙は彼のモノなのかもしれない。

 そうならいいと願ってしまうことが、どれだけ残酷な悪行か自覚している。長い、長い間。きっと想像もつかないくらいの永い間。どれだけ苦しんだのか。苦しんだと想像することが容易なくらいの姿に、自分の無力を嘆いたことは記憶に新しい。

 だから、触れた涙に口付けて、

「もう行けよ。俺のことなんて忘れてしまえ」

 語り掛けた刹那、壊れたように両目から溢れだす涙。

 これは、彼の涙か。

 ちがう、俺の涙だ。

 嘘すらつけないほどに、愛した彼に最初で最後の嘘を贈ろう。本当の気持ちを、混ぜ込んで。


 ――先に行け。きっと追い付くから。



END





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