僕はオトコに生まれたかった。

□拍手LOG。
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七夕の夜に


「ねえ、ライリ」

 星空の下、僕はライリに声をかけた。

「んー?」

 僕の隣で寝転ぶライリは、自分の両腕を枕にして流れる星空を眺めている。彼は案外ロマンチックで、こういうものが好きだ。イメージに合わないからと、皆には内緒にしているけれど。

「遠い異国で、今日はタナバタっていう日なんだって」

「タナバタ?」

 ごろん、と転がって、ライリはこちらに身体の正面を向けた。

「うん。昔、男女の星が結ばれたんだって。だけど、二人が仕事をしなくなっちゃって、怒った女のお父さんが女の方を河の対岸に連れ帰ちゃって、会えないようにしたんだって」

 星空を見上げたまま話していても、ライリが僕の話を真剣に聞いてくれていることが気配で伝わる。彼は今きっと、この話を聞いたときの僕と同じことを思っているだろう。

「でも、女があんまりにも嘆くから、可哀想になったお父さんは一年に一回、会うことを許した」

「その日が今日、で、タナバタ?」

 ライリに視線を落とし、僕は薄く微笑みながら首を縦に振った。

 右腕の上に頭を置き、ライリはしばらく何か考え込むように黙っていたけれど、

「同情なんかしねー」

 そう言って、目を瞑った。

 僕は笑った。

「そうだね、君なら河を泳いで会いにきそうだよね」

 そうして、そっと重ねられた手を、強く、強く握り返した。



*END*





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