僕はオトコに生まれたかった。
□拍手LOG。
7ページ/27ページ
七夕の夜に
「ねえ、ライリ」
星空の下、僕はライリに声をかけた。
「んー?」
僕の隣で寝転ぶライリは、自分の両腕を枕にして流れる星空を眺めている。彼は案外ロマンチックで、こういうものが好きだ。イメージに合わないからと、皆には内緒にしているけれど。
「遠い異国で、今日はタナバタっていう日なんだって」
「タナバタ?」
ごろん、と転がって、ライリはこちらに身体の正面を向けた。
「うん。昔、男女の星が結ばれたんだって。だけど、二人が仕事をしなくなっちゃって、怒った女のお父さんが女の方を河の対岸に連れ帰ちゃって、会えないようにしたんだって」
星空を見上げたまま話していても、ライリが僕の話を真剣に聞いてくれていることが気配で伝わる。彼は今きっと、この話を聞いたときの僕と同じことを思っているだろう。
「でも、女があんまりにも嘆くから、可哀想になったお父さんは一年に一回、会うことを許した」
「その日が今日、で、タナバタ?」
ライリに視線を落とし、僕は薄く微笑みながら首を縦に振った。
右腕の上に頭を置き、ライリはしばらく何か考え込むように黙っていたけれど、
「同情なんかしねー」
そう言って、目を瞑った。
僕は笑った。
「そうだね、君なら河を泳いで会いにきそうだよね」
そうして、そっと重ねられた手を、強く、強く握り返した。
*END*