僕はオトコに生まれたかった。
□拍手LOG。
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異常以上の愛情
会いたくてたまらないときは、何度もアイツの名を呼ぶ。
きっとアイツは知らないだろう。自分がどれほど愛されているか。
こんなにも心狂わして、こんなにもすべてを占拠して、こんなにも支配されているのに、それでも煩わしいとは思えない。むしろ愛しくて、もっと、もっと、とアイツを求める。
異常だ。
異常でいい。
異常がいい。
そのコトバを背負うだけで、アイツに狂わされることが許されるというのならば、甘んじてその称号を受け入れよう。
けれど、そんなに愛されているなんてことを、きっとアイツは微塵も思いはしないのだろう。それどころか、自分の愛情の方が余程重いと思っているに違いない。
「なめられたもんだな」
「え? 何か言った?」
見上げてくる丸い大きな瞳。その瞳の中に笑顔を捧げて、おもむろに首を横に振った。
「いや、独り言……。ほら、ぐずぐずするなよ。行くぞ、アルト!」
「ぐずぐずって……君が寝坊したんじゃないか! ライリ!」
両頬を膨らませながら、走り出した俺の後を追ってくるアルト。
お前は知らないだろう。本当はお前に起こしてもらいたくて、俺が寝坊していること。
「ライリの馬鹿! 今度寝坊したら、僕は帰るからな!」
「おーこわ。寝坊しない日もあるだろが」
「それでも絶対遅刻するじゃないか! いい加減誰かに起こしてもらったらどうなの!」
「いいんだよ! 俺にはアルトっつー便利な目覚ましがあるんだから」
「君は僕をなんだと思ってるんだ!」
俺は声を上げて笑いながら、少しだけ走る速度を落とした。
*End*