短編集

□キス
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『うーん、キスかぁ』


琵管曖は新作のリップを見て呟いた。


『キスってなんだろ』


「どうしたいきなり」


曖の友人が突っ込んだ。


『いや、なんかゲシタルト崩壊したっぽく捉えられても仕方ないけど様々な意味があるよね〜ってさぁ』


「あんたドラマの見すぎじゃね?」


友人は冷たい視線を曖に向ける。


『そうかなぁ』


曖は首をかしげた。


そしてその言葉は空に消えた。


曖は新作のリップをつけて登校した。


「曖って乾燥で唇切れる人だっけ?」


前の席の子が聞いてくる。


『いや、なんとなくリップ買ったから』


「へ〜、そのリップ新作だよね。色なしでその薔薇の香りはいいかも〜」


新作のリップは今どき珍しい色なしのリップだった。


(肉倉先輩はどう思うかな)


買ったときからそのことがほんわり頭に浮かぶ。


『このリップってキスしたくなるのがコンセプトなんだって。どうかな』


「うーん、でもそんなムードになったらしたくなるかも?私も男性じゃないからわかんなーい」


そういった会話をしてると授業開始のチャイムがなった。


 
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