短編集
□人になった猫
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日本へ帰国後、曖は前から持っていたアパートに向かった。
『・・・変わってないなぁ』
曖は懐かしいマイホームに安堵した。
「こんにちは!あれ?新しくアパートに入った人ですか?」
ショートカットヘアーの少年が、曖に話しかけてきた。
『ああ、私は前からここの住人だよ。仕事柄こっちへ帰ってくる機会がなくてね』
「そうなんですか・・・僕は紗滋・クロスロードといいます。よろしくお願いします!たまに差し入れを持って行っても良いですか?」
好青年は、グラハムから突き放された曖にとっては心安らぐ印象だった。
『いいよ。こちらこそよろしくね。私は琵管曖』
「はい!!!」
「ちょっと紗滋!!!置いてかないでよ!!!」
後ろから、長いブロンド髪の女の子が荒っぽく、少年に怒鳴りかけた。
「あ、ちょっと今お隣さんに挨拶してたんだよ」
「また隣人?私はルイス。ルイス・ハレヴィ。よろしくね」
少女は曖に挨拶をした。
『私は琵管曖。こちらこそよろしくねルイスちゃん』
「ねぇ!良かったら紗滋の家で食事しない?人が多い方が楽しいと思うの!」
『ごめんなさい。今は部屋の片付けが先だから。それと、休暇を取ったのはひとりになりたいのもあるから』
曖は鍵でドアをあけて、バタンと閉じた。
「なによー!!!悩み事なら誰かに相談した方が良いでしょ!!!」
「待ってルイス。きっと他人には話せない関連の悩み事なんだよ!」
「あー!!!気になる!!!紗滋!!!」
二人のドタバタは曖の部屋まで届いていた。
(・・・私、本当に軍を止めようかな)
曖はベッドの片隅で、静かに声を押し殺して泣いていた。