ダンボール戦機
□オタクロス
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「スミレさん、いや、今はブライトね。今日のライブ、とても良かったわ」
佐伯由美子はドリンクを出しながら、微笑む。
『はい。アキハバラの人達に喜んで貰えてとても良かったです。それで、次の新曲のほうなんですけど』
スミレはドリンクを見つめながら、そわそわしている。
「ああ、そのことね。今あなたが提出した歌詞に曲をつけてもらっているわ」
『早く新曲を出したいです。今回の作詞には特別な思いを込めていますから』
由美子は微笑む。
「歌詞からとても伝わってきたわ。一体誰に贈る歌なのかしら?」
『レックスさんに贈る歌です。彼にはとてもお世話になりましたから』
スミレが微笑み返すと、ほっこりした時間が流れる。
その空気を破ったのは、CCMの着信音だった。
『はい、もしもし』
スミレが電話を取ると、途端にバンの焦った声が聞こえる。
「もしもし!スミレさん!オタクロスの件で大変なんです!GPS送りますから、出来るだけ早めにきてください!」
すると、すぐに電話が切れる。
『はぁ・・・佐伯さんブルーフェアリーの活動はこの後ないですよね』
「そうね。この後ないわ。用事でも?」
『そうなんです。すみません。ミーティングは今夜電話でしましょう』
由美子は頷く。
「わかったわ。じゃあ、また今夜」
スミレはコートを羽織り、荷物をまとめて走り出した。