BLEACH

□日常
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「柿本参席、あまり頭を下げるものではないよ。君は開放されたから気にせず暮せばいいさ」


顔を上げるとそこには優しく微笑む藍染の顔があった。


『愛刀からも言われましたが、やはりそうは上手くいかないものです。自ら犯した罪は消えず頭に焼き付いていますから』


菜種は両手を胸に組み、下を向いてしまう。


『あの時もしも仲間を殺さずに首を引きずってでも生かして置いたのならまた違う道があったのかと思うとやはり私の行った殺戮の救済方法はエゴでしかないと思ってしまうのです』


藍染も難しい問題に黙り込んでしまう。


『何が正しく何が悪いのか、そんなの分かっていたのに私の身勝手で殺してしまい、同族を殺めた血に汚れた手は何度洗おうとも、綺麗にはならないのです』


「そんなにも仲間のことを思っていたのか」


『はい。実力は違えど良き仲間であり、家族のような同僚でしたから。この消えることのない苦しみをずっと抱えて生きることが私の罪滅ぼしかと考えることしか出来ません』


かつて鬼道の神童と言われた菜種だったが、疎まれ憎まれもした。


しかし、死神になって出来た同僚は暖かく受け入れてくれた。


『今も死刑にならないことが苦しくて苦しくて仕方ありません。もしもの世界線の私は居ないのですから。何度も結果を後悔しながら振り返らないようにすると振り返ってしまう自殺もできないような未熟な私をせめて笑ってください』


菜種は強く抱きしめられていた。


「君はなんて、なんて良い子なんだ」


そう言った藍染の言葉には力が籠もっていた。


『だって、だって、鬼道の神童なんて言われてイジメられてた私を暖かく受け入れてくれた仲間を殺してしまった。それが悔しくて、悔しくて』


菜種は思わず泣き出ししゃくりあげてしまう。


『剣術の才能もあるから妬まれて蔑まれて、それでも、それでも私は、私は、人を殺したくなどなかった!』


菜種は声を殺して藍染の胸で思い切り泣いてしまった。


「すまない、僕には抱きしめることしか出来ない」


『いいんです、いいんです、私こそごめんな・・・』


菜種は謝りそうになる口を藍染に塞がれていた。


そして思い切り彼の胸で涙を流した。


 
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