短編集

□唇を噛む癖
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『はぁ、日本に帰りたい・・・』


曖はデスクワークの一休みにそんな一言が零れた。


「ホームシックか?琵管少佐」


『そうですよカタギリ司令・・・家に帰りたいです・・・』


このユニオン本拠地に来てから上司になった司令官を前にして曖は机に伏せた。


「少佐はまだ23だったか?」


『そうですよ・・・全く上の連中は何を考えて私なんか本拠地に呼び寄せたんだか』


今度は曖は起き上がり、椅子にもたれかかって天井を見上げた。


「ふむ。それに関しては私の上の権力争いで揉めて君に白羽の矢が立ったんだ。仕方あるまい」


『司令官としては二流、パイロットは三流の私に期待なんかされても・・・』


「それは違うな。自分を謙遜しすぎだ琵管少佐」


カタギリ司令官はグダグタ謙遜している曖の言葉を切った。


「君は訓練や試験向きではないが実践では成果を残しているではないか」


『そう言われてもガンダムの装甲に弾かれて皆無ですけど。部下を生かしながら撤退しか出来てません』


曖は自分の不甲斐なさに涙が滲む。


「戦場では多くを生かす者が贔屓される。だから君はここにいるのだよ」


『そんなこと言われましても、家の万年床に帰りたいです』


「まるで40を過ぎたオッサンの様な言い草だな少佐」


カタギリ司令官に飽きられつつ、彼女はグダグタ愚痴を溢したのであった。


 
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