短編集
□人は残酷だった
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『ねぇ?ブシドー?』
ブシドーの目は泳いで曖と目を合わせようとしない。
『まあブシドーが話したくないならいいけど。私の顔あと一ヶ月したら人工皮膚が馴染んでむくみも無くなるって言われたけど、仮面つけてるともといたユニオンの部下にも話しかけづらくて』
曖は廊下の空いた窓を眺める。
「曖特務大佐でもそんなことを?」
『うん。なんだか自分にも仮面つけてるみたいで嫌。やっぱり私には包帯かな』
曖はへにゃりと笑った。
『ブシドーはなんで仮面つけてるの?』
「これは過去の自分への戒めです」
『へぇー何か悪いことでもしたの?』
曖は窓のサンに肘をついて訪ねる。
「とても未練がましい感情があります。ガンダムで部下を失い、目の前で上司までも失いました」
『あら、そう。御愁傷様』
あっさりと曖はブシドーに返事を返した。
『じゃあまだ過去の自分とその死んだ人にさようなら出来て無いんだね』
「そうなりますね」
『可哀想。死んだ人たちが』
曖は窓の外を見て言った。
『私ももとは殺人鬼だったけど、軍人になって、色々学んで。死んだ人は未練がなくて引き留めて欲しい訳じゃない。それをさようなら出来なくて引き留めて可哀想だと思う。非常に自分勝手だなって思うようになった』
曖はブシドーの手の甲にキスをした。
『貴方も早く過去の自分にさようなら出来るといいね』
ふっと笑う曖はブシドーの心の核心を見透かしているかのようだった。