短編集

□人になった猫
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(出たくない・・・)


曖はグラハムの名前が表示され、鳴り続ける携帯端末の電源を切った。


『今は、あなたといると痛いの・・・』


曖はグラハムが我慢弱いことを知っていた。


『今更遅いよ・・・』


分かっていても、放置され、疎外された感じが、曖にはつらかった。


『昔失恋した気持ちと似てる・・・』


寄ってきた人間が、曖を過去を知り、逃げていったあの感情に。


親友に近かった友も、婚約した彼も、時には頬を叩かれ、時には婚約破棄され。


曖は孤独で涙がにじむ。


(これが私が犯した罪なのね・・・)


曖は心がギシギシと大きな傷口から溢れ出す血に体を丸めた。


『私を許して』


曖は夜が明けるまで、ベッドの隅で啜り泣いていた。


翌日、曖は気晴らしに、ドライブに出かけることにした。


『レンタカー借りないと』


曖は携帯端末で、レンタカーの場所を検索しようとした。


(グラハムからの着信・・・今日は出ようかな)


曖はグラハムにメールをして、レンタカーの場所を検索した。


『久々だなぁ・・・』


曖は私服を選んでいるときにふと思った。


最近は軍が慌ただしく、出掛けることはほぼなかった。


『思いっ切り楽しもう』


曖は髪の毛を整え、必要な荷物を鞄に入れて、玄関から出た。


すると、一つ隣の人が帰ってきたところだった。


『こんにちは。まだこっちに帰ってきて挨拶まわりをしていないんですけど、琵管曖と申します。よろしくお願いします』


少年はぴくりと反応し、こちらを見てきた。


「俺は刹那・F・セイエイ」


『それでは私は出掛けるので』


曖はアパートを出て行こうとした。


「待て」


『何故です?』


「話がある」


少年は真剣な声で、曖を呼び止める。


「少し俺の部屋で話さないか?」


『今度にしてもらえませんか?私今ひとりになりたいので』


曖は必死に呼び止める少年の声を気にせず、歩いていった。


 
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