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□優しい嘘
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「やだなぁ、遊びに決まってるじゃん、本気にしてたの?」
あぁ、僕はまた嘘を言う
もうずっと前からついてるから慣れてると言うかこれが僕だから
「だからさぁ…嫌いなんだよね、大嫌い」
笑顔で嘘を言う僕
それを泣きそうで絶望した顔で見つめる僕の愛しい君ホントは大好き、愛してる、離れたくない
けど、みんなの為、何より愛する恋人の為僕は嘘をつく
こっちが泣きたくなるよ
「カノ…う、う…そ…だよな…?」
うろたえてる君を蔑んだ目で見る
「だって、普通に考えてみてよ、キモいよ、頭の良いシンタロー君なら告白の時、実際思ってたでしょ?同性愛なんてさ実るわけないじゃん、馬鹿じゃないの」
ケタケタ笑いながらグサグサ君の心を離す
もう、戻れない、きっと
なのに…なんで君は微笑むの?
「シンタロー…君、なんで?なんで笑ってんの?これは笑うこと?君にとっては絶望なことじゃない?」
「今、一つの結論がでたから…カノ、『ありがとう』」
いつも僕に向けてくれる、皆には少し違う優しい笑顔
「それは、今まで偽りの愛で抱いてくれて、って意味?」
シンタロー君は小さく首を横に振る
「違う、カノが何故こんなことを言っているのか、分かったからさ、だから、ありがとう」
あーあ、やっぱりシンタロー君は分かっちゃうんだよなぁ
僕が欺いててもその仮面の奥の顔をすぐ当てちゃう
本当、こういうとこ好き、偽りじゃない本当の僕を見てくれる、愛してくれる、だけどもうそろそろ皆が来るから行かなきゃ
「あはは、本当、頭の良い人は嫌いだよ、じゃあ、そろそろ僕は行くよ、もうここには現れない、じゃあね如月 伸太郎君」
僕は暗い路地裏に入って姿を消した
頬に流れる水は止まらない
視界がぼやけながらもブーツをカツカツ鳴らして前に進む
一方的な別れ
最悪な別れ
でも、僕は今までで最高の嘘を言えたと思う
君だけに、愛する君だけに優しい嘘を
「大嫌い、シンタロー君(大好き、シンタロー君)」