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□やっちまった企画!!ヒバツナキセキ!!!
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「きみ、そんな話しなかったよね」

 恭弥の声には、わずかながら叱責の色がにじんでいた。

「いや、だって、まさかお隣りさんだとは思わなかったんですよ!」

「ボクも、引っ越してくるとは言いませんでしたし」

 綱吉の答えに続けて、黒子が言う。

「結局、道を教えただけで……」

 あのときは、夕飯の買い物をするために、駅の反対側に出たのだ。

「雲雀さんの好きなコロッケは、そっち側の店でしか買えないから」

 あの日は、恭弥がコロッケを食べたいと言ったので、わざわざ綱吉はそちらへ回ったのである。
 それを思いだしたのか、恭弥は黙り込んだ。

「いい奥さんっスねえ」

 口を尖らせる綱吉に、黄瀬がなぜか幸せそうな顔をする。
 その視線が自分に向けられたのを察して、黒子が見返す。

「ボクに期待しないでください、黄瀬くん」

 そもそもモデルに油っこいものはダメでしょう、と続けられ、黄瀬はしゅんとしてしまった。

「とにかく、おれは、マンションまでの道だけ教えて、別れたんですよ」

 その日は、とまた黒子が続けた。

「でも、次の日も偶然会って」

「マジバでお礼にシェイクを奢りました」

「えっ、黒子っちが?」

「どういう意味ですか、黄瀬くん」

「黒子っち?」

 黄瀬の反応に、黒子が不満げな声を出す。さらに雲雀が、呼び方に引っ掛かった。

「黄瀬くんに気に入られると、そんなふうに呼ばれます」

「……ぼくのことは、気に入ってほしくないな」

「えー、雲雀っちって可愛くないですか?」

「なんか、鳥っぽいですね、ますます」

「ねー、そう思うよね」

 人の名前で盛り上がる二人を、雲雀はうんざりした顔で見ていた。

「まあ、そうなったら不思議なもので、ツナくんとは毎日のように駅で会うようになって」

「違う高校に通ってるのに、クラスメートより話したりしたよね、テツくんとは」

 まるで女子のように、ねー、と笑い合う二人に、恭弥と黄瀬が揃ってテーブルを叩いた。

「テツくんってなんだい、綱吉!」

「黒子っちが、いい笑顔してるっス!」

 恥ずかしいからとなかなか名前で呼んでもらえない恭弥と、デート中も黒子の表情を懸命に読もうとしている黄瀬の、哀しい叫びだった。



           
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