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□やっちまった企画!!ヒバツナキセキ!!!
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 雲雀家のリビングで、お隣り同士がお茶をしていた。
 恭弥と黄瀬の二人が、綱吉と黒子が何故知り合いなのかを知りたがったのだ。

「ボクが道に迷ったんです」


 黒子の話は、一週間ほど前にさかのぼる。

 黄瀬から、マンションへの荷物の運び込みが終わったと連絡がきた。
 入居を決めるときには立ち会ったが、引っ越しについては、黄瀬にまかせきりだった。
 自分の荷物くらい先に片付けておこう、そう思って委員会の当番を代わってもらい、早めに下校したのである。

 高校に近いという条件で選びはしたが、マンションの最寄駅は黒子にとって馴染みのない所だ。
 改札口が2つあることに気づかず、出てしまった。
 黄瀬と来たときに見つけたマジバを見たせいだが、この店がどちらの出口にもあることは知らなかった。
 マジバを右に……と薄い記憶に従って進んだ結果、見事に迷子になったのである。

 ひとまず駅まで戻り、近隣の案内図を見たが、新築マンションは記載がなかった。
 黄瀬に連絡すればいいのだろうが、仕事と聞いていたし、なにより悔しい。

「きょうは諦めて帰りましょうか……」

 つぶやいたとき、傍らに立つ人に気づいた。
 見ると、年齢も身長もあまり違わない少年だ。
 大きな目に、驚きを映してテツヤを見ている。
 つい見返すと、慌てたように辺りを見回す。

「あの」

 しかたなくテツヤから声をかけた。

「うわ、しゃべった」

 うわ、と言われて、テツヤの目がわずかに険しくなる。

「あ、ごめん!」

 さらに慌てながら謝って、なさい、と続けるべきか、考えている。

「え、と、たぶん同じ歳かなと思うんだけど」

 おれ高一、と付け足してテツヤの応えを待つ。

「ボクもそうです」

 なんとなく、それが?と聞こえたのか、少年は困ったような表情になる。

「なんか、きみが困っているみたいに見えたから、つい……」

 改札を出たところで、不思議な光景を見たのだと、彼は続けた。




「なにもなさそうなのに、みんながこの辺で飛びのくから、なにかなと思って」

 近づいて見れば、途方に暮れたテツヤがいた。

「でも、ごめん、よけいなお世話だよね」

 うつむき加減に頭をかく少年に、テツヤは少し興味を持った。

「……実を言うと、困っています」

「え」

「道に迷いました」

「あー、迷子なんだ」

 テツヤのことを馬鹿にするのではなく、少年は笑顔になった。

「黒子テツヤです」

「おれ、沢田綱吉」

 人の流れから外れた場所で、二人は知り合った。

           
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