リクエスト
□甘えたがりの子ども
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赤司の独白のような呟きに虹村は黙って聞いた。
卒業してからすぐにアメリカへ渡米したため帝光が今どんな状況なのか分からない。だが、アメリカに居てもあまりいい噂は効かなかった。きっと、赤司の今はなしているのはそれと関係しているのだろう。
「これじゃあ、駄目だと思っていても、どうしようもできなくて。自分の力じゃあ、どうしようもできなくて」
「赤司」
俯いて話す赤司は昔見ていた頃の堂々とした姿は微塵も見られない。まるで幼い子どもだ。
迷子になって、途方にくれている子ども。
きっと、並ならぬ状況だったのだろう。赤司は何もかも一人で背負ってしまう傾向がある。人よりも少しできるから、完璧に見えてしまうから誰もカモが赤しに頼ってしまう。赤司もそれを嫌と言えず、抱え込んでしまう。背負いきれないほどまでに背負い込んで、さらに背負い込んでしまう。
「お前は人よりも多少出来がいい。そりゃ天才と言われれるほどだ」
「……はい」
不意に頭を撫でられている感触が伝わった。撫でられたのだと、わかった。
「けど、だからって何もかも背負うことはねーんだよ。いいか、お前はまだこどもだ。頼っていいんだ、甘えていいんだ。失敗したっていい、全部を背負い込まなくてもいい」
きっと、そう言ったって赤司は全部を背負い込んでしまうのだろうけれど。なんでもない振りしながら無理をしてしまうのだろう。
昔から、そんなところが心配で気が気じゃなかったのだ。
「今、こうして話してくれたことももうお前の中じゃあケリつけようとしてんだろ? しかも誰にも相談せずに」
「……はい」
誰にも相談せずに、というところが当たっていて何とも言えない気持ちになった。でも、言えなかったのだ、完璧な完全無欠の赤司征十郎がそんなことでそんなことで悩むなどあってはならないことだから。
「なら、オレがとやかく言う権利はねーよ。あるとしたらお前が傷つけた奴らだけだな。……でもな」
赤司はそろりと顔を上げた。
見上げれば虹村が笑って自分を見つめていた。2年前と変わらない笑み。頼りになる、包容力とは違うがこの人なら甘えても大丈夫だと安心できる笑み。
ああ、この人は確かに自分の先輩で、あの帝光メンバーを纏めていた主将なのだと思った。
自分が、唯一心から尊敬で来て、頼っていた人なのだと思った。
「辛いときは、こうして甘えさせることだってできる。うまい答えは無理かもしれねーが、相談に乗ることだってできる。頼っていいんだ、甘えていいんだ」