□お願い、そばにいて。
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部活も引退し、高校も無事卒業できた。
そして大学にも合格し、何事もなく上京できた。
まだ入学し、数日しかたっていないが、大学生活もまぁまぁだ。
そう、まぁまぁなのだ。
けっして良くはない。
理由ならわかっている。

「赤司、帰れ。Go to hell」

「千尋、それは意味が違う。地獄には行きたくないな」

ビシッと親指を下に向け、蛆虫を見るかのような目で赤司を見るが赤司はその視線を受け流す。
4月5日。12時ジャストに赤司が訪ねてきた。
渡した覚えのない合鍵を使い、赤司はラノベを読み至福の時を堪能していた黛の前に現れたのだ。
地獄に行けと言わずして何と言おうか。

「何のようだ」

「今日は4月5日だ」

「だから?」

「世に言う赤黛の日なんだ」

「そんな日は存在しない。脳ミソを今すぐ葉山の目の前で爆発してこい」

なぜ葉山を指名したのか。
そこには他意はない。
ただ、あの天然うぜーな、と思っているくらいだ。

「まぁ、つまりだ」

黛がラノベを読んでいたのはベッドの上。
赤司はこれ幸いと黛を押し倒す。
勿論、ラノベは栞を挟み、閉じた。

「……おい」

不機嫌そうな黛の声音。

「今日ぐらいはデレてくれないか?」

「はぁ?」

いきなり来て、押し倒した挙げ句何を言い出すと言うのだ、この厨二は。

「死ねばいい」

「ツンはいらない。デレをくれ」

「い、や、だ!!」

ぐぐぐと起き上がろうとしたが、一体どこからそんな力を出せるのか、ピクリとも動かせない。

「なぜデレてくれない?」

「いやだから」

「恋人同士なのに?」

耳に息を吹き掛けるように、囁く。
震える黛の肩。

「な、なにすんだ!?」

顔を真っ赤にし、暴れる黛。
それを押さえる赤司。

「千尋」

低く、囁く声。

「……、久しぶりにあって…」

ポツリ、呟く。

「嬉しかった、よ…」

そう言ってふい、と視線を反らす。
顔は、真っ赤に染まっている。

「ああ、もう!こんなこと言わせんな!!」

「千尋…」

真っ赤にして吠える黛に赤司は面を食らったように呆ける。
が、それも一瞬のこと。

「千尋…」

にっこりと笑う赤司。

「へ?」

じょじょに近づいてくる赤司の顔。
嫌な予感しかせず、黛は顔をひきつらせた。

「ちょ、おい!!なに盛ってんだよ!?」

「煽ったお前が悪い」

「んなバカな事を…、んぐっ!?」

口づけを交わされながら、黛は後悔した。
デレるんじゃなかった、と。

もう二度とデレたりしないと、黛は固く誓った。



お願い、そばにいて。
(一生デレてやんないから、覚悟しろ)

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