時を駆ける思い
□序章~ハジマリノ唄
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――カキーンカキーンカキーン
鉄を打つ音がする。銀時は近所迷惑になりかねないその騒音に顔をしかめながら中に入っていった。
周りには沢山の動かないカラクリが置かれている。このカラクリはおそらくそこのハンマーを持ったご老人が作った物だろう。
「おい、じーさん。例の物できてんだろーな?」
「おぉ!銀の字か、よく来た。お前さんが欲しがってんのはこいつだろう」
源外はそう言うと奥から見覚えのある銀時の愛車を持ってきた。
「そうそう! これがねぇと仕事もろくにできねーかんなぁ」
銀時はスクーターを受け取ると、新品同様になったそれを確認し始める。
源外はその様子をみて思い出したかのように、口を開いた。
「いい忘れたことがある。銀の字よく聞け。俺ァこの原付に新しい機能を追加しといた。まだ試した事がねェーんでな、成功するかわからんがなにかやばくなった時だけ、そこのスイッチを押せ。」
初めはうんうんと聞いていたが飽きてきたのか、どこにスイッチがあるのか探し始めた。スクーターは源外が弄りすぎてもはや元の形をとどめていない様な気がする。複雑すぎるそれにひとつだけ怪しい髑髏のマークが書いてあるボタンがあった。銀時はそれに手を伸ばし、スイッチを押した。
――ポチッ
「くれぐれも安易に押さないことだ。」
「えっ?」
銀時は人差し指をスイッチにのせたまま、青い顔で源外を見た。
「……押しちゃったんですけどぉ」
すると青白い光が銀時を包みこんだ。
なにが起こっているのか分からない二人は顔を見合わせてぽかんとしていた。
そして、一瞬その光は眩いほどの光を放つと徐々に弱まり消えていった。
映画のような光景だった。
残された源外は同じく残ってしまったスクーターのボタンを押してみた。
すると、ハンドルの部分から茶色い液体が溢れた。なにか真っ白い豆腐のようなものにかけると美味しそうな気がする。
「スイッチを押すと醤油が出る仕組みにしたはずなんだがなぁ」
源外は豆腐を買いに外に出ようと思った。